いきなり気を失ってぶっ倒れかけた幼女魔王さまだったけど、
「う、うーん……」
すぐに意識を取り戻したので、
「ほらよ、魔王さま」
俺はいい感じに焼けたばかりの肉を、携帯木皿に置いて幼女魔王さまへと差し出した。
ついでに、失礼だと思ったので、呼び方を「お前」ではなく「魔王さま」と改める。
国家元首に「お前」呼びはさすがにヤバイ。
「……」
しかしどうしたことか、幼女魔王さまはそれを受け取ろうとしないのだ。
「どうしたんだ? 冷めないうちに食べたほうがおいしいぞ?」
それにしても、さっきから何をそんなに驚いたような顔をしているんだろう?
「う、うむ。では気を取り直して――ぱくり。こ、これはっ!?」
パクっと一口食べた途端に、幼女魔王さまの顔が驚愕の色に染まった。
そのままぺろりと1枚平らげたので、追加のもう1枚を木皿に入れてやり、さらにミスティにも分けてあげる。
ミスティも同じように美味しそうに食べてくれて、この場の責任シェフとして俺も鼻が高かった。
「な? 干し肉もなかなか美味しかっただろ? 実は【イフリート】は肉を焼くのがものすごく上手いんだぜ?」
俺は精霊騎士しか知りえない、超が付くほどの極秘情報をこっそり教えてあげた。
「そのことなのじゃが」
「どのことだ?」
「先ほどから【ウンディーネ】だの【イフリート】だの言っておるようじゃが」
「ああ、俺の契約精霊たちだよ」
「水の最上位精霊【ウンディーネ】に、炎の最上位精霊【イフリート】とな?」
「そうだぞ」
「さっきそなた、光の最上位精霊【ルミナリア】や、浄化の最上位精霊【カオウ】の力も使うておったの?」
「なにせ俺は精霊騎士だからな。精霊と契約してなんぼだろ?」
「な、な、な……なんぼのわけあるかーい!!」
幼女魔王さまがものごっつい大声を上げた。
「っとと。いきなり大声を出すなよな、びっくりするだろ?」
「びっくりしたのは妾のほうじゃわい! それだけの最上位精霊たちと契約するのを、『食後に一杯お茶でも飲むか~』みたいに当たり前のように言うなし!」
「おいおい、いきなりなんだよ? どうどう、落ち着けよ?」
「これが落ち着いていられるかえ!? 【イフリート】じゃぞ!? 時に神をも殺す炎の魔神とまであがめ恐れられる【イフリート】じゃぞ!? それをお主はなーに肉を焼くことなんぞに使役しておるのじゃ!」
「だって美味しく焼けるんだもん」
「軽っ!? 言葉軽っ!? か、確認なのじゃが、今は【イフリート】の話をしておるのじゃよの?」
「もちろんそうだけど? なにせ戦地だと、使える物は何でも使わないと生き残れなかったからさ。精霊を使って種火や飲み水をパッと用意できるのは、精霊使いの強みだよなぁ」
「お、お主には伝説の存在に対するロマンとか情緒とか、そういうものがないのかえ?」
「ああ、そういうことか」
「やっと分かってくれたかの」
「【イフリート】の焼き加減はまさに伝説級だっただろ? 魔王さまも病みつきになったってわけだ」
「誰もそんなとこにツッコんでおらんわー!! だいたい最上位の精霊とは1体と契約することすら普通は難しいのじゃぞ!? それを2つも3つも4つも契約しておるなどと、これに驚かんで何に驚けというのじゃ!?」
「一応言っておくと、風の最上位精霊【シルフィード】、幸運の最上位精霊【ラックス】とか、他にも諸々いっぱい契約しているぞ?」
「んほぉぉっ!!??」
幼女魔王さまが目を大きく見開き、あんぐり口を開いたまま固まった。
驚きすぎて過呼吸にでも陥ったのかこほー、こほー、と変な呼吸をしていたので、【ウンディーネ】の【清浄なる水】で綺麗な水を出して飲ませてあげる。
「も、もしや妾は、イタズラ好きの精霊にでも化かされておるのじゃろうか?」
「いや、現実だ。そんなことより魔王さま、精霊についてえらく詳しいな?」
普通なら、ここまでぽんぽんと精霊の名前が出てきたりはしない。
そんな俺の疑問に答えてくれたのは、
「実は魔王さまは、精霊使いの素養があるんですよ!」
お肉を堪能した後は、俺たちの会話を興味深そうに聞いていたミスティだった。
「う、うーん……」
すぐに意識を取り戻したので、
「ほらよ、魔王さま」
俺はいい感じに焼けたばかりの肉を、携帯木皿に置いて幼女魔王さまへと差し出した。
ついでに、失礼だと思ったので、呼び方を「お前」ではなく「魔王さま」と改める。
国家元首に「お前」呼びはさすがにヤバイ。
「……」
しかしどうしたことか、幼女魔王さまはそれを受け取ろうとしないのだ。
「どうしたんだ? 冷めないうちに食べたほうがおいしいぞ?」
それにしても、さっきから何をそんなに驚いたような顔をしているんだろう?
「う、うむ。では気を取り直して――ぱくり。こ、これはっ!?」
パクっと一口食べた途端に、幼女魔王さまの顔が驚愕の色に染まった。
そのままぺろりと1枚平らげたので、追加のもう1枚を木皿に入れてやり、さらにミスティにも分けてあげる。
ミスティも同じように美味しそうに食べてくれて、この場の責任シェフとして俺も鼻が高かった。
「な? 干し肉もなかなか美味しかっただろ? 実は【イフリート】は肉を焼くのがものすごく上手いんだぜ?」
俺は精霊騎士しか知りえない、超が付くほどの極秘情報をこっそり教えてあげた。
「そのことなのじゃが」
「どのことだ?」
「先ほどから【ウンディーネ】だの【イフリート】だの言っておるようじゃが」
「ああ、俺の契約精霊たちだよ」
「水の最上位精霊【ウンディーネ】に、炎の最上位精霊【イフリート】とな?」
「そうだぞ」
「さっきそなた、光の最上位精霊【ルミナリア】や、浄化の最上位精霊【カオウ】の力も使うておったの?」
「なにせ俺は精霊騎士だからな。精霊と契約してなんぼだろ?」
「な、な、な……なんぼのわけあるかーい!!」
幼女魔王さまがものごっつい大声を上げた。
「っとと。いきなり大声を出すなよな、びっくりするだろ?」
「びっくりしたのは妾のほうじゃわい! それだけの最上位精霊たちと契約するのを、『食後に一杯お茶でも飲むか~』みたいに当たり前のように言うなし!」
「おいおい、いきなりなんだよ? どうどう、落ち着けよ?」
「これが落ち着いていられるかえ!? 【イフリート】じゃぞ!? 時に神をも殺す炎の魔神とまであがめ恐れられる【イフリート】じゃぞ!? それをお主はなーに肉を焼くことなんぞに使役しておるのじゃ!」
「だって美味しく焼けるんだもん」
「軽っ!? 言葉軽っ!? か、確認なのじゃが、今は【イフリート】の話をしておるのじゃよの?」
「もちろんそうだけど? なにせ戦地だと、使える物は何でも使わないと生き残れなかったからさ。精霊を使って種火や飲み水をパッと用意できるのは、精霊使いの強みだよなぁ」
「お、お主には伝説の存在に対するロマンとか情緒とか、そういうものがないのかえ?」
「ああ、そういうことか」
「やっと分かってくれたかの」
「【イフリート】の焼き加減はまさに伝説級だっただろ? 魔王さまも病みつきになったってわけだ」
「誰もそんなとこにツッコんでおらんわー!! だいたい最上位の精霊とは1体と契約することすら普通は難しいのじゃぞ!? それを2つも3つも4つも契約しておるなどと、これに驚かんで何に驚けというのじゃ!?」
「一応言っておくと、風の最上位精霊【シルフィード】、幸運の最上位精霊【ラックス】とか、他にも諸々いっぱい契約しているぞ?」
「んほぉぉっ!!??」
幼女魔王さまが目を大きく見開き、あんぐり口を開いたまま固まった。
驚きすぎて過呼吸にでも陥ったのかこほー、こほー、と変な呼吸をしていたので、【ウンディーネ】の【清浄なる水】で綺麗な水を出して飲ませてあげる。
「も、もしや妾は、イタズラ好きの精霊にでも化かされておるのじゃろうか?」
「いや、現実だ。そんなことより魔王さま、精霊についてえらく詳しいな?」
普通なら、ここまでぽんぽんと精霊の名前が出てきたりはしない。
そんな俺の疑問に答えてくれたのは、
「実は魔王さまは、精霊使いの素養があるんですよ!」
お肉を堪能した後は、俺たちの会話を興味深そうに聞いていたミスティだった。