「おい勇者! まさか聖剣の真の力を解放したのかよ!?」
「そうさ! 僕の最終奥義でケリを付けてやるよ!」
「聖剣の中には『天使』が封じ込められている。天使顕現セラフィム・コールは、聖剣に封印されている天使の力を一時的に開放し、自らの肉体に顕現させて超絶ブーストする対魔族用の切り札だ。それをよりにもよって、人間相手に使おうってのかよ!」
「魔族の味方をする君には、実におあつらえ向きだろう? 死ねぇっ!」
瞬間、勇者の姿が俺の視界から消え失せた。
比喩でもなんてもない、文字通り消えていなくなった。
理由は単純で、勇者の動きがあまりに速すぎて、俺は視認することができなかったのだ!
「速い!? ぐぅ……っ!」
直後、襲い来る強烈な横薙ぎを、俺は黒曜の精霊剣・プリズマノワール】を垂直に立ててガードした。
柄を持っていない左手を剣の腹に押し当てて両手で支えることで、なんとか威力を殺しきる。
だけど今、防御できたのは本当にただの偶然だった。
それでも直感的になんとなく勇者の動きを感じられたのは、もしかしたらお節介な精霊たちが、そっと俺を導いてくれたのかもしれない。
「ほぅ、今のを防御したか。さすがだなハルト。だがそれも、いつまでもつかな?」
その言葉と共に、天使化した勇者が怒涛の連続攻撃を繰り出してきた!
シュッ、シュッっと鋭い風切り音をまといながら、激しく苛烈な、目で追いきれない超高速の連撃が俺を狙って襲い来る!
「くっ、この――!」
事ここに至っては反撃のチャンスなんてものは欠片もない。
俺はひたすらに防御に徹するものの――だめだ、とても防御しきれない!
小さな傷が、俺の身体にどんどんと刻み込まれてゆく――。
「どうしたどうした! 大口を叩いておいて、手も足も出ないのか? ほらそこだ、オラぁ!!」
黒曜の精霊剣・プリズマノワールが跳ね上げられ、俺の身体が完全無防備でがら空きになった。
「終わりだ――!」
「ぐ――っ!!」
聖剣が俺の身体を容赦なく真っ二つに叩き斬って――、
「そう言えばそんな技も持っていたか」
斬られたはずの俺の身体が、霞のように消えていった。
俺はとっさの判断で幻影の最高位精霊【イリュシオン】の精霊術、本物そっくりの質感ある残像を作り出す【質量のある残像】を使用したのだ。
よほど感心しのたか、それとも攻め疲れて一息つきたかったのか。
いずれにせよ動きを止めた勇者から、俺は少し距離をとる――とろうとして、
「あぐ……っ」
しかしそこで、俺は右の脇腹を左手で抑えながら片膝をついてしまった。
視線をやると、抑えたところから血がどんどんと滲み出ていた。
天使化による神速の一撃は、最高位の精霊術をもってしても、完全にはかわしきれなかったのだ。
「これは、まずいな……致命傷じゃないがかなり深いぞ……ぐぅっ……」
加えて、俺の身体全体が疲労のピークを迎えつつあった。
今の勇者は、一撃一撃が岩をも砕く威力を秘めている。
それを受け止め続けるだけで、俺の体力はゴリゴリと削られてしまっていた。
だが、このまま膝をついていては死ぬだけだ。
勝利を確信したのだろう。
勇者が俺を見下すように睥睨しながら近づいてくる。
「勝負あったな。君の負けだ」
「こなくそ――」
俺が疲労困憊の身体に渇を入れ、残った全気力を振り絞って立ち上がろうとした時だった。
「出でよ【火トカゲ】! 精霊術【マッチ10本の炎】!」
突如として横合いから声が上がるとともに、マッチ10本を束ねたくらいの小さな炎が勇者に向かって「しゅぼー」と放出されたのは――。
「そうさ! 僕の最終奥義でケリを付けてやるよ!」
「聖剣の中には『天使』が封じ込められている。天使顕現セラフィム・コールは、聖剣に封印されている天使の力を一時的に開放し、自らの肉体に顕現させて超絶ブーストする対魔族用の切り札だ。それをよりにもよって、人間相手に使おうってのかよ!」
「魔族の味方をする君には、実におあつらえ向きだろう? 死ねぇっ!」
瞬間、勇者の姿が俺の視界から消え失せた。
比喩でもなんてもない、文字通り消えていなくなった。
理由は単純で、勇者の動きがあまりに速すぎて、俺は視認することができなかったのだ!
「速い!? ぐぅ……っ!」
直後、襲い来る強烈な横薙ぎを、俺は黒曜の精霊剣・プリズマノワール】を垂直に立ててガードした。
柄を持っていない左手を剣の腹に押し当てて両手で支えることで、なんとか威力を殺しきる。
だけど今、防御できたのは本当にただの偶然だった。
それでも直感的になんとなく勇者の動きを感じられたのは、もしかしたらお節介な精霊たちが、そっと俺を導いてくれたのかもしれない。
「ほぅ、今のを防御したか。さすがだなハルト。だがそれも、いつまでもつかな?」
その言葉と共に、天使化した勇者が怒涛の連続攻撃を繰り出してきた!
シュッ、シュッっと鋭い風切り音をまといながら、激しく苛烈な、目で追いきれない超高速の連撃が俺を狙って襲い来る!
「くっ、この――!」
事ここに至っては反撃のチャンスなんてものは欠片もない。
俺はひたすらに防御に徹するものの――だめだ、とても防御しきれない!
小さな傷が、俺の身体にどんどんと刻み込まれてゆく――。
「どうしたどうした! 大口を叩いておいて、手も足も出ないのか? ほらそこだ、オラぁ!!」
黒曜の精霊剣・プリズマノワールが跳ね上げられ、俺の身体が完全無防備でがら空きになった。
「終わりだ――!」
「ぐ――っ!!」
聖剣が俺の身体を容赦なく真っ二つに叩き斬って――、
「そう言えばそんな技も持っていたか」
斬られたはずの俺の身体が、霞のように消えていった。
俺はとっさの判断で幻影の最高位精霊【イリュシオン】の精霊術、本物そっくりの質感ある残像を作り出す【質量のある残像】を使用したのだ。
よほど感心しのたか、それとも攻め疲れて一息つきたかったのか。
いずれにせよ動きを止めた勇者から、俺は少し距離をとる――とろうとして、
「あぐ……っ」
しかしそこで、俺は右の脇腹を左手で抑えながら片膝をついてしまった。
視線をやると、抑えたところから血がどんどんと滲み出ていた。
天使化による神速の一撃は、最高位の精霊術をもってしても、完全にはかわしきれなかったのだ。
「これは、まずいな……致命傷じゃないがかなり深いぞ……ぐぅっ……」
加えて、俺の身体全体が疲労のピークを迎えつつあった。
今の勇者は、一撃一撃が岩をも砕く威力を秘めている。
それを受け止め続けるだけで、俺の体力はゴリゴリと削られてしまっていた。
だが、このまま膝をついていては死ぬだけだ。
勝利を確信したのだろう。
勇者が俺を見下すように睥睨しながら近づいてくる。
「勝負あったな。君の負けだ」
「こなくそ――」
俺が疲労困憊の身体に渇を入れ、残った全気力を振り絞って立ち上がろうとした時だった。
「出でよ【火トカゲ】! 精霊術【マッチ10本の炎】!」
突如として横合いから声が上がるとともに、マッチ10本を束ねたくらいの小さな炎が勇者に向かって「しゅぼー」と放出されたのは――。