ある日のこと。
俺が自室に入ろうとドアを開けたところ、なぜかミスティがメイド服の上をはだけて素肌と下着をさらしていた。
可憐なミスティによく似合う、可愛らしいピンクのブラジャーだった。
「えっと……ミスティ?」
「は、ハルト様!?」
見る見るうちに顔を真っ赤にしたミスティは、しかしそのまま固まってしまい――、
「おおっと、ごめん! 覗くつもりはなかったんだ!」
俺はただちに謝罪をすると、急いでドアを閉めた。
ドアを閉めてすぐに部屋を確認する。
「……? でもここは俺の部屋で間違いないよな? なら、どうしてミスティが俺の部屋で服を脱いでいたんだ?」
なんとも不思議な事態を前に、俺がしきりに首をかしげていると、
「ふむ。これはいわゆる『お約束』というやつじゃの」
いつの間にかやってきていた幼女魔王さまが、なにやら納得顔で満足そうにつぶやいた。
「お約束ってなんだ?」
「お約束とは、物語に『まるで約束でもしているかのように必ず登場する』よくある展開のことじゃ」
「よくある展開?」
「ヒロインが着替えていたところ、主人公が偶然にドアを開けてそれを見てしまう――というようなイベントは、流行りのラノベでもテンプレ中のテンプレじゃからの」
俺の疑問に対して、幼女魔王さまがなにやら変てこなことを言いだした。
「なぁ魔王さま、一つだけいいかな?」
「なんなのじゃ?」
「お話と現実を一緒くたにしちゃいけないぞ?」
俺は心からの親切心でそう指摘してあげたんだけど、
「それをハルトが言うのかえ!? おとぎ話の桃源郷に入ったハルトがそれを言うのかえ!? 妾はそこんとこ、どうしても納得がいかんのじゃが!?」
幼女魔王さまはプリプリと怒ってしまった。
「むっ、そう言われると確かにそうかも?」
おとぎ話を現実に体験しちゃった俺がそれを言うのはどうかなと、自分でも思わなくもない俺だった。
そんな噛み合ってるのか噛み合っていないのか微妙に分からない会話をしていると、ミスティがそそくさと落ち着かない様子で俺の部屋から顔を出した。
さっきのことを引きずっているのだろう、頬はまだ少し赤いままだ。
もちろんメイド服はちゃんと着なおしている。
ミスティは開口一番、
「先ほどは大変申し訳ありませんでした。ハルト様のお部屋を清掃中に、急にブラのホックが外れてしまったんです。お見苦しいものをお見せてしまい、言葉もございません」
そう言ってミスティは、俺に向かって深々と頭を下げた。
「いいや、俺の方こそ掃除の時間なのは知っていたのに、勝手に入って悪かった。静かだったから、てっきりもう掃除は終わったものだとばかり勘違いしちゃってさ」
「いいえ、そもそも自室に入ろうとしただけのハルト様は、なにも悪くありませんので」
「でもいろいろ見ちゃったのは事実だからさ」
「いえいえ勝手に見せてしまった私の方が悪いんです」
「でも俺も――」
…………
……
「最後のこそばゆい譲り合いのやり取りまで、実にお約束じゃのう。これは創作意欲が湯水のごとく湧いてくるのじゃ。うむ、良きかな良きかな」
この一連のお約束がよほどツボったのか。
さっきからずっと、やたらと満足顔な幼女魔王さまだった。
俺が自室に入ろうとドアを開けたところ、なぜかミスティがメイド服の上をはだけて素肌と下着をさらしていた。
可憐なミスティによく似合う、可愛らしいピンクのブラジャーだった。
「えっと……ミスティ?」
「は、ハルト様!?」
見る見るうちに顔を真っ赤にしたミスティは、しかしそのまま固まってしまい――、
「おおっと、ごめん! 覗くつもりはなかったんだ!」
俺はただちに謝罪をすると、急いでドアを閉めた。
ドアを閉めてすぐに部屋を確認する。
「……? でもここは俺の部屋で間違いないよな? なら、どうしてミスティが俺の部屋で服を脱いでいたんだ?」
なんとも不思議な事態を前に、俺がしきりに首をかしげていると、
「ふむ。これはいわゆる『お約束』というやつじゃの」
いつの間にかやってきていた幼女魔王さまが、なにやら納得顔で満足そうにつぶやいた。
「お約束ってなんだ?」
「お約束とは、物語に『まるで約束でもしているかのように必ず登場する』よくある展開のことじゃ」
「よくある展開?」
「ヒロインが着替えていたところ、主人公が偶然にドアを開けてそれを見てしまう――というようなイベントは、流行りのラノベでもテンプレ中のテンプレじゃからの」
俺の疑問に対して、幼女魔王さまがなにやら変てこなことを言いだした。
「なぁ魔王さま、一つだけいいかな?」
「なんなのじゃ?」
「お話と現実を一緒くたにしちゃいけないぞ?」
俺は心からの親切心でそう指摘してあげたんだけど、
「それをハルトが言うのかえ!? おとぎ話の桃源郷に入ったハルトがそれを言うのかえ!? 妾はそこんとこ、どうしても納得がいかんのじゃが!?」
幼女魔王さまはプリプリと怒ってしまった。
「むっ、そう言われると確かにそうかも?」
おとぎ話を現実に体験しちゃった俺がそれを言うのはどうかなと、自分でも思わなくもない俺だった。
そんな噛み合ってるのか噛み合っていないのか微妙に分からない会話をしていると、ミスティがそそくさと落ち着かない様子で俺の部屋から顔を出した。
さっきのことを引きずっているのだろう、頬はまだ少し赤いままだ。
もちろんメイド服はちゃんと着なおしている。
ミスティは開口一番、
「先ほどは大変申し訳ありませんでした。ハルト様のお部屋を清掃中に、急にブラのホックが外れてしまったんです。お見苦しいものをお見せてしまい、言葉もございません」
そう言ってミスティは、俺に向かって深々と頭を下げた。
「いいや、俺の方こそ掃除の時間なのは知っていたのに、勝手に入って悪かった。静かだったから、てっきりもう掃除は終わったものだとばかり勘違いしちゃってさ」
「いいえ、そもそも自室に入ろうとしただけのハルト様は、なにも悪くありませんので」
「でもいろいろ見ちゃったのは事実だからさ」
「いえいえ勝手に見せてしまった私の方が悪いんです」
「でも俺も――」
…………
……
「最後のこそばゆい譲り合いのやり取りまで、実にお約束じゃのう。これは創作意欲が湯水のごとく湧いてくるのじゃ。うむ、良きかな良きかな」
この一連のお約束がよほどツボったのか。
さっきからずっと、やたらと満足顔な幼女魔王さまだった。