「……なぁ」
「なんじゃハルト?」
「たしか偉大なる聖魔王の命日に、その素晴らしい業績に思いをはせるイベントじゃなかったのか?」
主催者席の隣にいる幼女魔王さまに俺は小さな声で尋ねた。
「ちゃんと餅つき大会とも言っていたじゃろう?」
「気のせいかな? 故人を偲ぶどころか、みんな超ノリノリで餅をついているんだが??」
「大会は盛り上がった方が良いじゃろうて」
「これはそんなレベルじゃねーよ! 完全なお遊びイベントじゃないか!」
今はちょうど、餅をつく速さ&その出来栄えを競う懸賞金付きの餅つきコンテストの真っ最中だった。
「おおっとぉ! ここで新記録が出たぁ! さらに素晴らしい餅の伸びだ! きめ細やかな質感もグレイト! 審査員による出来栄え点は、ここまでで最高の9点の評価ァ! スピードも出来栄えも文句なし! ここにきてついにトップが入れ替わったぞ! ではどうぞ、一位の席へお座り下さい!」
司会の巧みな話術によって会場中が大いに湧き上がる。
「この盛り上がりを見てみよ。聖魔王もきっと、草葉の陰で泣いて喜んでおるじゃろうて」
「俺のいた帝国でこんなことやったら、皇室に対する不敬罪で打ち首確定だぞ……」
「何を言っておるのじゃ、そういうハルトも皆に負けぬくらいにいい笑顔をしておるぞ?」
「まぁそうだな。楽しいよ。みんな笑顔だし、ぶっちゃけ俺も楽しい」
「なら良いではないか。ほれ、次はハルトの番じゃ。主催者たる妾の名代として参加するのじゃから、良い結果を期待しておるからの」
「そんなこと言っても俺、餅つきをしたことってないんだよなぁ」
歴戦の勇士と名高いレアジョブ精霊騎士の俺とはいえ、王家主催のイベントで、初めての餅つきで主催者の名代を務めるのは少し荷が重い。
「ハルト様、楽しいイベントなんですから気楽にガンバです!」
ミスティがゆるーい励ましをくれる。
「ま、そうだよな。気楽に行ってくるか」
「ちなみに昨年はミスティが見事3位に入ったのじゃ」
「だから変にプレッシャーをかけないでくれ……」
俺は魔王さまの名代と言うこともあって、皆の視線を一身に浴びながら舞台へと上がった。
その途中で、
「ん……あれって──」
俺はある精霊がこの会場にやって来ていることに気がついた。
こいつは確か――。
「さーて皆さん! 次が最後のチャレンジャーだ! 魔王さまの名代を務めるはハルト・カミカゼ! なんでも元・勇者パーティで激レアジョブの精霊騎士だって話だぜ! これは期待せざるを得ないよな! それではいざ尋常に、スタート!」
司会の開始の合図とともに、俺は精霊術を行使した!
「餅つき精霊【モッチー】、一時契約! 餅つき精霊術【ぺったんこ】発動!」
――もっちもちにしてやんよ――
俺の身体に、餅つき精霊のモチモチした力がみなぎってゆく――!
舞台に上がる際、俺はこの餅つき精霊が餅つきコンテストの色香に引き寄せられて集まってきていたのを、見つけていたのだ。
そして精霊騎士の最大の強みは、様々な精霊と契約することで、まるで反則のようにその精霊の持つ特殊能力を使用できることにある!
「つまり今の俺は、既に餅をつくスペシャリストってわけだ!」
「なっ!? 息を吐くように野良精霊と一時契約を行ったじゃと!?」
「ま、魔王さま! お気を確かに!」
視界の隅っこで、卒倒した魔王さまをミスティが慌てて支えていた。
「あれ? また俺なにかやっちゃったか?」
いや、今はそれよりも、俺に与えられた名代としての使命を果たさねば――!
「いくぞ【モッチー】!」
ぺったんぺったんぺったんぺったん!
俺は素早く、そして強すぎず弱すぎずの絶妙の力加減で餅の元となるもち米をぺったんしてゆく――!
ぺったんぺったんぺったんぺったん!
ぺったんぺったんぺったんぺったん!
ぺったんぺったんぺったんぺったんぺったんぺったんぺったんぺったん――!!
こうして。
餅つき精霊【モッチー】の力を借りて究極かつ至高の餅をついてみせた俺は、
「優勝はハルト・カミカゼ!」
見事コンテストで優勝し、幼女魔王さまの名代としての責務を果たしたのだった。
その後、ついたお餅をみんなで食べたんだけど、
「こ、これは……!」
「美味しいです」
「自分がついた餅に言うのはなんだけどさ? めちゃくちゃ美味いな」
さすがは餅つき精霊【モッチー】だ。
来年も機会があれば頼んだぜ?
「なんじゃハルト?」
「たしか偉大なる聖魔王の命日に、その素晴らしい業績に思いをはせるイベントじゃなかったのか?」
主催者席の隣にいる幼女魔王さまに俺は小さな声で尋ねた。
「ちゃんと餅つき大会とも言っていたじゃろう?」
「気のせいかな? 故人を偲ぶどころか、みんな超ノリノリで餅をついているんだが??」
「大会は盛り上がった方が良いじゃろうて」
「これはそんなレベルじゃねーよ! 完全なお遊びイベントじゃないか!」
今はちょうど、餅をつく速さ&その出来栄えを競う懸賞金付きの餅つきコンテストの真っ最中だった。
「おおっとぉ! ここで新記録が出たぁ! さらに素晴らしい餅の伸びだ! きめ細やかな質感もグレイト! 審査員による出来栄え点は、ここまでで最高の9点の評価ァ! スピードも出来栄えも文句なし! ここにきてついにトップが入れ替わったぞ! ではどうぞ、一位の席へお座り下さい!」
司会の巧みな話術によって会場中が大いに湧き上がる。
「この盛り上がりを見てみよ。聖魔王もきっと、草葉の陰で泣いて喜んでおるじゃろうて」
「俺のいた帝国でこんなことやったら、皇室に対する不敬罪で打ち首確定だぞ……」
「何を言っておるのじゃ、そういうハルトも皆に負けぬくらいにいい笑顔をしておるぞ?」
「まぁそうだな。楽しいよ。みんな笑顔だし、ぶっちゃけ俺も楽しい」
「なら良いではないか。ほれ、次はハルトの番じゃ。主催者たる妾の名代として参加するのじゃから、良い結果を期待しておるからの」
「そんなこと言っても俺、餅つきをしたことってないんだよなぁ」
歴戦の勇士と名高いレアジョブ精霊騎士の俺とはいえ、王家主催のイベントで、初めての餅つきで主催者の名代を務めるのは少し荷が重い。
「ハルト様、楽しいイベントなんですから気楽にガンバです!」
ミスティがゆるーい励ましをくれる。
「ま、そうだよな。気楽に行ってくるか」
「ちなみに昨年はミスティが見事3位に入ったのじゃ」
「だから変にプレッシャーをかけないでくれ……」
俺は魔王さまの名代と言うこともあって、皆の視線を一身に浴びながら舞台へと上がった。
その途中で、
「ん……あれって──」
俺はある精霊がこの会場にやって来ていることに気がついた。
こいつは確か――。
「さーて皆さん! 次が最後のチャレンジャーだ! 魔王さまの名代を務めるはハルト・カミカゼ! なんでも元・勇者パーティで激レアジョブの精霊騎士だって話だぜ! これは期待せざるを得ないよな! それではいざ尋常に、スタート!」
司会の開始の合図とともに、俺は精霊術を行使した!
「餅つき精霊【モッチー】、一時契約! 餅つき精霊術【ぺったんこ】発動!」
――もっちもちにしてやんよ――
俺の身体に、餅つき精霊のモチモチした力がみなぎってゆく――!
舞台に上がる際、俺はこの餅つき精霊が餅つきコンテストの色香に引き寄せられて集まってきていたのを、見つけていたのだ。
そして精霊騎士の最大の強みは、様々な精霊と契約することで、まるで反則のようにその精霊の持つ特殊能力を使用できることにある!
「つまり今の俺は、既に餅をつくスペシャリストってわけだ!」
「なっ!? 息を吐くように野良精霊と一時契約を行ったじゃと!?」
「ま、魔王さま! お気を確かに!」
視界の隅っこで、卒倒した魔王さまをミスティが慌てて支えていた。
「あれ? また俺なにかやっちゃったか?」
いや、今はそれよりも、俺に与えられた名代としての使命を果たさねば――!
「いくぞ【モッチー】!」
ぺったんぺったんぺったんぺったん!
俺は素早く、そして強すぎず弱すぎずの絶妙の力加減で餅の元となるもち米をぺったんしてゆく――!
ぺったんぺったんぺったんぺったん!
ぺったんぺったんぺったんぺったん!
ぺったんぺったんぺったんぺったんぺったんぺったんぺったんぺったん――!!
こうして。
餅つき精霊【モッチー】の力を借りて究極かつ至高の餅をついてみせた俺は、
「優勝はハルト・カミカゼ!」
見事コンテストで優勝し、幼女魔王さまの名代としての責務を果たしたのだった。
その後、ついたお餅をみんなで食べたんだけど、
「こ、これは……!」
「美味しいです」
「自分がついた餅に言うのはなんだけどさ? めちゃくちゃ美味いな」
さすがは餅つき精霊【モッチー】だ。
来年も機会があれば頼んだぜ?