【CASE:3、アクセサリショップ】
「おや魔王さま。今日はカレシ連れかい? 珍しいね」
「残念ながら違うのじゃ。こやつはハルト・カミカゼ。先日危ういところで命を救われての。今は客人として王宮に招いておるのじゃ」
「いやー、魔王さまにもついに春が来たんだねぇ。で、カレシさん。魔王さまにとってもよく似合う素敵な髪飾りがあるんだけど。ほら、この可愛い子熊のなんてどうだい? 魔王さまによく似合いそうだろう?」
「じゃからハルトはカレシではないと――」
「こう見えて魔王さまは、可愛いものが大好きなんだよ。プレゼントするならこいつで間違いないね」
「じゃからハルトは――」
「そうだな、確かにこれはよく似合いそうだ。ふむ、作りもなかなかに丁寧だな……よし、買おわせてもらおう」
「お買い上げありがとうございます」
「ハルト!?」
「あれ、あんまり好みじゃなかったか?」
幼女魔王さまに似合いそうだと思ったんだけどな。
「いや、割とかなり好みの、可愛い系の髪飾りではあるのじゃが。その、あの……ごにょごにょ)」
「なら良かった」
「あ、うん……なのじゃ」
どこかそわそわしながら、幼女魔王さまはこくんと頷いた。
「それと店主、こっちのも頼む。このシンプルなシルバーのネックレスだ。ミスティに似合いそうだからな」
「わ、私にもいただけるのですか!?」
まさか自分にもプレゼントがあるとは思っていなかったのか、ミスティが驚いた顔を見せる。
よほど驚いたのか、ほんのり頬が赤く染まっていた。
「だって3人で来てるのに、魔王さまにだけプレゼントしたら、かなり感じ悪いだろ? もしかして嫌だったか?」
「まさかそんなです! ハルト様にいただけるのはとても嬉しいですけど、その――」
ミスティはちらりと幼女魔王さまに、遠慮のような視線を送ったけれど、幼女魔王さまはふむふむと満足そうに頷いているだけだった。
「ならオッケーだな。そういうわけで店主、これも頼む」
「あ、ありがとうございますハルト様」
半ば強引に押し切られたミスティは、しかし素直にネックレスを受け取ってくれた。
そして、
「ではこのネックレスは、家宝の一つとして実家の倉に厳重に保管するとともに、未来永劫・子々孫々に至るまで大切に伝えて残してまいります」
ミスティは使命感に満ち満ちたキリリとした表情で、そんなことを言った。
「ええっと、普通に身につけてくれた方が嬉しいかな?」
何の変哲もないネックレスを家宝として残されたら、後世のアーレント家の人たちも取り扱いに困るだろう。
「おっとおっと、まさかの両手に花だったかい。若いねぇ。だけど一つだけ言っておくよ。魔王さまやミスティを泣かせたら許さないからね?」
「店主、親身なご助言に感謝する。肝に銘じておこう。ま、俺がいる限りは、2人を悲しい目に合わせたりはしないけどな」
自分で言うのもなんだが、激戦続きの勇者パーティで5年も前衛=フロント・アタッカーとして戦ってきた俺に勝てる相手はそうはいない。
「おやおや、カレシさんは大した自信家だねぇ。やっぱり若いってのはこうでなくっちゃねぇ!」
「こう見えて腕っぷしには自信があるんだ。2人に悲しい思いをさせる前に、俺が全ての障害を排除してみせる」
言って、俺は腰に差した黒曜の精霊剣・プリズマノワールの柄を軽く持ち上げてみせた。
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどね……割と鈍いねカレシさん」
「じゃからハルトはカレシではないと――」
そんな幼女魔王さまの声は、しかし最後まで店主には届かなかったようだった。
「おや魔王さま。今日はカレシ連れかい? 珍しいね」
「残念ながら違うのじゃ。こやつはハルト・カミカゼ。先日危ういところで命を救われての。今は客人として王宮に招いておるのじゃ」
「いやー、魔王さまにもついに春が来たんだねぇ。で、カレシさん。魔王さまにとってもよく似合う素敵な髪飾りがあるんだけど。ほら、この可愛い子熊のなんてどうだい? 魔王さまによく似合いそうだろう?」
「じゃからハルトはカレシではないと――」
「こう見えて魔王さまは、可愛いものが大好きなんだよ。プレゼントするならこいつで間違いないね」
「じゃからハルトは――」
「そうだな、確かにこれはよく似合いそうだ。ふむ、作りもなかなかに丁寧だな……よし、買おわせてもらおう」
「お買い上げありがとうございます」
「ハルト!?」
「あれ、あんまり好みじゃなかったか?」
幼女魔王さまに似合いそうだと思ったんだけどな。
「いや、割とかなり好みの、可愛い系の髪飾りではあるのじゃが。その、あの……ごにょごにょ)」
「なら良かった」
「あ、うん……なのじゃ」
どこかそわそわしながら、幼女魔王さまはこくんと頷いた。
「それと店主、こっちのも頼む。このシンプルなシルバーのネックレスだ。ミスティに似合いそうだからな」
「わ、私にもいただけるのですか!?」
まさか自分にもプレゼントがあるとは思っていなかったのか、ミスティが驚いた顔を見せる。
よほど驚いたのか、ほんのり頬が赤く染まっていた。
「だって3人で来てるのに、魔王さまにだけプレゼントしたら、かなり感じ悪いだろ? もしかして嫌だったか?」
「まさかそんなです! ハルト様にいただけるのはとても嬉しいですけど、その――」
ミスティはちらりと幼女魔王さまに、遠慮のような視線を送ったけれど、幼女魔王さまはふむふむと満足そうに頷いているだけだった。
「ならオッケーだな。そういうわけで店主、これも頼む」
「あ、ありがとうございますハルト様」
半ば強引に押し切られたミスティは、しかし素直にネックレスを受け取ってくれた。
そして、
「ではこのネックレスは、家宝の一つとして実家の倉に厳重に保管するとともに、未来永劫・子々孫々に至るまで大切に伝えて残してまいります」
ミスティは使命感に満ち満ちたキリリとした表情で、そんなことを言った。
「ええっと、普通に身につけてくれた方が嬉しいかな?」
何の変哲もないネックレスを家宝として残されたら、後世のアーレント家の人たちも取り扱いに困るだろう。
「おっとおっと、まさかの両手に花だったかい。若いねぇ。だけど一つだけ言っておくよ。魔王さまやミスティを泣かせたら許さないからね?」
「店主、親身なご助言に感謝する。肝に銘じておこう。ま、俺がいる限りは、2人を悲しい目に合わせたりはしないけどな」
自分で言うのもなんだが、激戦続きの勇者パーティで5年も前衛=フロント・アタッカーとして戦ってきた俺に勝てる相手はそうはいない。
「おやおや、カレシさんは大した自信家だねぇ。やっぱり若いってのはこうでなくっちゃねぇ!」
「こう見えて腕っぷしには自信があるんだ。2人に悲しい思いをさせる前に、俺が全ての障害を排除してみせる」
言って、俺は腰に差した黒曜の精霊剣・プリズマノワールの柄を軽く持ち上げてみせた。
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどね……割と鈍いねカレシさん」
「じゃからハルトはカレシではないと――」
そんな幼女魔王さまの声は、しかし最後まで店主には届かなかったようだった。