今日も今日とて、俺は幼女魔王さまとミスティに同行していた。
ゲーゲンパレスに来てからこっち、毎日のように俺は2人と一緒にいるんだけど、そのすべての体験が新鮮で飽きることはない。
「今日はこんなに朝早くから、どこに行くんだ? 遠出でもするのか?」
「今日は月に一度の大きな朝市が開かれるでの。そこに行くのじゃ」
「朝市?」
「この月一の朝市はゲーゲンパレスの名物で、近隣の町や集落からもたくさんの人が売り物を持ち寄ったり、買い物にやって来るんですよ」
「お祭り騒ぎというやつなのじゃ」
「むしろもう公式に、お祭りと名乗ってもいいレベルなんですけどね」
「お祭りかぁ、それは楽しみだな! でもなんで公式にお祭りとは名乗らないんだ? その方が箔が付くだろ?」
「民間が大きくしてきたものに、国が上から頭ごなしに口出しすると、たいがい失敗するからじゃ。むろん雑踏警備などの各種支援はしておるが、基本的にはなりゆきに任せておる」
「なんかそれ、分かるかも……」
こうして俺は、2人に連れられてゲーゲンパレス名物という月に一度の朝市に連れていってもらったんだけど――。
「な、な、なな――なんていう規模なんだ!」
俺は想像を絶する巨大マーケットに度肝を抜かれていた。
目抜き通りや大広場だけでなく、1本2本3本と隣の通りのさらにその隣の通りにも、果ては城門の外にまで、ありとあらゆるスペースに屋台や出店がところ狭しと並んでいたのだ!
しかもただ物を売る人がいるだけではなかった。
大道芸人や吟遊詩人が様々な演目を披露しては、おひねりを貰っているのだ。
さらには、その朝市目当てにやってきた客の多さと来たら――!
「見渡す限りに人、人、人……。人がこれでもかとごった返している! なんて数だ!」
数万じゃきかないんじゃないか?
圧倒的な人の数だ。
「ふふん、どうじゃ。なかなかのものであろう」
「混み混みのマーケット、略してコミケと呼ばれることもあるんですよ?」
「コミケか……すっげー……確かにこれはお祭りだよ。大規模戦闘は何度も経験してきたけど、これだけたくさんの人を見たことはさすがになかった」
人の多さに目を白黒させる俺の姿を見て、幼女魔王さまとミスティがご満悦といった様子で笑う。
「ではゆくぞ。はぐれるでないのじゃよ?」
「ああ。心するよ」
あまりの人の波に少し臆した俺の手を、幼女魔王さまがにぎっと握る。
実際は勝手知ったる幼女魔王さまが、処女航海に出る俺がはぐれないようにと手を繋いでくれたんだけど、その姿と来たらアレだ。
「傍目には、娘を朝市に連れてきた若いお父さんのように見えるかもしれないな」
「お主は本っっ当に! 何でも正直に思ったことを言っちゃう奴じゃのう!?」
俺の言葉に幼女魔王さまがちょっとだけプンスカし、
「魔王さまとハルト様はすっかり仲良しですね」
ミスティはそれを見て、微笑ましいって感じで楽しそうに笑う。
つまり今日もいつも通りな俺たちは、賑わいを見せる大朝市に突入した!
【CASE:1、魚屋さん】
「魔王さまじゃねーですか! 今日は新鮮ないい魚があがってますぜ! 刺身にするならぜひこいつを! 今日のイチオシですぜ!」
「むむっ、なんとも目の綺麗な大きなタイであるのじゃ! よし、買ったのじゃ。後で取りに戻るゆえ、しばらく置いておいてほしいのじゃ」
「あいよ! まいどあり!」
【CASE:2、お菓子屋さん】
「魔王さま、新作のクッキーです。良かったら見てってくださいな」
「ふむ、実に見目鮮やかな可愛らしいクッキーよの。ミスティどうじゃ?」
「買います! ノータイムで買います! こっちの旧作とセットで20個ずつ、いえ30個ずつ!」
「またえらくいっぱい買うんだな」
「あ、いえ、そのですね……これは、えっと、別に私が大食いというわけではないのでして……」
俺の何気ない感想に、ミスティがごにょごにょ言いながら顔を赤らめた。
どうもミスティは、大食いな女の子だと俺に思われるのが恥ずかしいようだ。
俺的には女の子がご飯をいっぱい食べるのは、健康的でむしろ魅力的だったりするんだけどな。
その辺は男女の価値観の違いなんだろうけど、ちょっと失言だったな。
価値観の押し付けは良くない。
今後は気を付けよう。
「そう言ってやるでない、ハルト。ミスティはの、ここのクッキーが大好物なのじゃから。ふむ、せっかくじゃ。近いうちに3人でお茶会でもするのじゃ。ミスティ、準備を頼むぞ」
「承知いたしました。でもでもここのクッキーは本当に美味しいので、ハルト様もきっと気に入ると思いますよ」
「普段控えめなミスティがそこまで言うんだ、楽しみにしているよ」
ゲーゲンパレスに来てからこっち、毎日のように俺は2人と一緒にいるんだけど、そのすべての体験が新鮮で飽きることはない。
「今日はこんなに朝早くから、どこに行くんだ? 遠出でもするのか?」
「今日は月に一度の大きな朝市が開かれるでの。そこに行くのじゃ」
「朝市?」
「この月一の朝市はゲーゲンパレスの名物で、近隣の町や集落からもたくさんの人が売り物を持ち寄ったり、買い物にやって来るんですよ」
「お祭り騒ぎというやつなのじゃ」
「むしろもう公式に、お祭りと名乗ってもいいレベルなんですけどね」
「お祭りかぁ、それは楽しみだな! でもなんで公式にお祭りとは名乗らないんだ? その方が箔が付くだろ?」
「民間が大きくしてきたものに、国が上から頭ごなしに口出しすると、たいがい失敗するからじゃ。むろん雑踏警備などの各種支援はしておるが、基本的にはなりゆきに任せておる」
「なんかそれ、分かるかも……」
こうして俺は、2人に連れられてゲーゲンパレス名物という月に一度の朝市に連れていってもらったんだけど――。
「な、な、なな――なんていう規模なんだ!」
俺は想像を絶する巨大マーケットに度肝を抜かれていた。
目抜き通りや大広場だけでなく、1本2本3本と隣の通りのさらにその隣の通りにも、果ては城門の外にまで、ありとあらゆるスペースに屋台や出店がところ狭しと並んでいたのだ!
しかもただ物を売る人がいるだけではなかった。
大道芸人や吟遊詩人が様々な演目を披露しては、おひねりを貰っているのだ。
さらには、その朝市目当てにやってきた客の多さと来たら――!
「見渡す限りに人、人、人……。人がこれでもかとごった返している! なんて数だ!」
数万じゃきかないんじゃないか?
圧倒的な人の数だ。
「ふふん、どうじゃ。なかなかのものであろう」
「混み混みのマーケット、略してコミケと呼ばれることもあるんですよ?」
「コミケか……すっげー……確かにこれはお祭りだよ。大規模戦闘は何度も経験してきたけど、これだけたくさんの人を見たことはさすがになかった」
人の多さに目を白黒させる俺の姿を見て、幼女魔王さまとミスティがご満悦といった様子で笑う。
「ではゆくぞ。はぐれるでないのじゃよ?」
「ああ。心するよ」
あまりの人の波に少し臆した俺の手を、幼女魔王さまがにぎっと握る。
実際は勝手知ったる幼女魔王さまが、処女航海に出る俺がはぐれないようにと手を繋いでくれたんだけど、その姿と来たらアレだ。
「傍目には、娘を朝市に連れてきた若いお父さんのように見えるかもしれないな」
「お主は本っっ当に! 何でも正直に思ったことを言っちゃう奴じゃのう!?」
俺の言葉に幼女魔王さまがちょっとだけプンスカし、
「魔王さまとハルト様はすっかり仲良しですね」
ミスティはそれを見て、微笑ましいって感じで楽しそうに笑う。
つまり今日もいつも通りな俺たちは、賑わいを見せる大朝市に突入した!
【CASE:1、魚屋さん】
「魔王さまじゃねーですか! 今日は新鮮ないい魚があがってますぜ! 刺身にするならぜひこいつを! 今日のイチオシですぜ!」
「むむっ、なんとも目の綺麗な大きなタイであるのじゃ! よし、買ったのじゃ。後で取りに戻るゆえ、しばらく置いておいてほしいのじゃ」
「あいよ! まいどあり!」
【CASE:2、お菓子屋さん】
「魔王さま、新作のクッキーです。良かったら見てってくださいな」
「ふむ、実に見目鮮やかな可愛らしいクッキーよの。ミスティどうじゃ?」
「買います! ノータイムで買います! こっちの旧作とセットで20個ずつ、いえ30個ずつ!」
「またえらくいっぱい買うんだな」
「あ、いえ、そのですね……これは、えっと、別に私が大食いというわけではないのでして……」
俺の何気ない感想に、ミスティがごにょごにょ言いながら顔を赤らめた。
どうもミスティは、大食いな女の子だと俺に思われるのが恥ずかしいようだ。
俺的には女の子がご飯をいっぱい食べるのは、健康的でむしろ魅力的だったりするんだけどな。
その辺は男女の価値観の違いなんだろうけど、ちょっと失言だったな。
価値観の押し付けは良くない。
今後は気を付けよう。
「そう言ってやるでない、ハルト。ミスティはの、ここのクッキーが大好物なのじゃから。ふむ、せっかくじゃ。近いうちに3人でお茶会でもするのじゃ。ミスティ、準備を頼むぞ」
「承知いたしました。でもでもここのクッキーは本当に美味しいので、ハルト様もきっと気に入ると思いますよ」
「普段控えめなミスティがそこまで言うんだ、楽しみにしているよ」