そう突きつけられたような瞬間、アンドレアは目の前が真っ暗になった気がした。

 再三、きちんと検査をしろと要求した。
 エステルが、王家が幼い頃に選んだ理由である結婚資格の魔力をほとんど失ってしまったなんて、そんなこと信じたくなかった。

 どこかの貴族の陰謀なのではないかと、アンドレアは疑った。

 調べて分かったのは、エステルが大半の魔力を失ってしまったのは事実だということ。

 そして、彼女の魔力が癒し属性だったため、魔力暴走を起こしてしまったとはいえ、結果として運び込まれた大病院で全患者の病を治してしまった、という事実だった。

『魔力が残っていたのなら、国にとって貴重な医療魔法の使い手になったのではないだうか』
『惜しい人の魔力を、失わせてしまったものだ』

 いまさらになって残念がる声が、貴族の間からちらほらと聞こえてきた。

 アンドレアとエステルの間は、はたから見れは完全に冷めきっていた。

 誰もが、魔力量が唯一、二人の婚約を繋ぎとめていたと考えている。