「あー、だる……」

 私は今日、セレシア家が運営する大学院の卒業セレモニーに参加していた。

 きらびやかなパーリーと違ってセレブはいないし、逆に奨学金でどうにか大学院に通う貧乏人ばっかりだし。
 はっきり言って地味なイベントでかったるいことこの上ないよ。

 私は超サゲサゲなテンションで、ただただ時間が過ぎるのを待っていた。

 そこへ、
「マリア様、折り入ってお話が――」
 一人の青年がやってきた。

「えっと、あなたたしか壇上でなにか読んでた――」

 半分寝かけだったからよく覚えてないんだけど、たしかそんなだった……はず?

「僕は首席でこの学園を卒業しました。その力量を見込んでどうか、奨学金の返済を猶予して頂けないでしょうか?」

「はぁ……」
 急になに言ってんだこいつ?

「現在、新薬の開発構想があるんです。奨学金を返済するには研究以外に別の仕事もしないといけなく、研究に集中することができないんです。猶予していただいた分は将来お金を稼いで必ず返済いたしますので、どうかご検討頂けませんか――」

 青年は必死な様子で頭を下げてきた。
 主席って言ってるしすごく頭もいいんだろうね。

 だから私は言ってあげた。

「いきなり何を言うかと思えば。最初から人の金と優しさにすがろうだなんて、首席が聞いて呆れるんだけど? 自分のことは自分でなんとかするのが男ってもんでしょう? それをよくもまぁ女に助けを乞おうだなんて! 恥を、恥を知りなさい!」

 私はズバリ正論を言ってあげたんだ。

 ……というのはもちろん建前でぇ(笑)

 別にこいつの奨学金なんてはした金くらい、パっと払ってあげても良かったんだけど。

 あふぅ。
 能力のある人間が境遇のせいで悶え苦しむ姿を見るのは本当に快感ね!

 これが本音だった。
 もちろん言わないけどね(笑)

 青年はというと雷にでも打たれたようにハッとした後、身体をぶるぶると震わせうつむいていたので、

「ではごきげんよう」

 私は優雅にカーテシーをすると、奨学金なんてポンと支払えってお釣りがくるくらいの超高級セレブドレスを見せつけるように翻しながら、にまにまと笑みを浮かべてその場を立ち去った。

「うーん、卒業セレモニーなんて超かったるいイベントだと思ってたけど、最後の最後でとっても気分がよくなったかな!」


 ~~後日。


「マリア様、シノノメ製薬から業務提携の依頼が来ております」

「シノノメ製薬? あの業界最大手の? っていうか依頼が来てるのは私じゃなくてお父さまにでしょ?」

「いいえ、マリア様宛てにございます」
「はぁ……」

 なんで私?
 私はシノノメ製薬の関係者と個人的なお付き合いなんて、まったくしてないんだけど?

「新薬の発売にあたって、敬愛するマリア様のお名前を冠したものを発売したいとのことです。あわせてぜひともこの件で業務提携させてほしいと」

「それはまぁ、殊勝な心がけですわね?」

 悪い気はしないけれど、
「なんで……?」

「念のため、諜報に優れた昔なじみの騎士に探りを入れてもらったところ、どうも開発プロジェクトの中心人物たっての希望のようですな。契約内容も当方には得しかないノーリスク・ハイリターンの内容でございました」

「それで相手方になんの得があるわけ?」
「ないと思われます」
「????」

 もしかしてその人は、私の個人的なファンなのかしら?

 ねぇねぇそこのあなた。
 ちょうどいいわ。

 参考程度にちょっとあなたの意見を聞かせてくれないかしら?