「暑い、暑すぎるわ……」
休日にもかかわらず、強烈な日差しが照り付ける屋外を避けて自分の部屋にこもっていた私は、あまりの暑さに机に突っ伏してしまった。
「も、申し訳ありません!」
パタパタパタパタ!
専属メイドのアイリーンが必死に大うちわで扇いでくれるものの、もはやうちわで扇ぐ程度では焼け石に水だった。
「今年はいつになく暑いわね……はぁ、汗が止まらないわ……なんかもう溶けてバターになっちゃいそうな気分……」
「も、申し訳ありません!」
パタパタパタパタ!
私の呟きを耳にしたアイリーンが、さらに必死な様子で扇ぎはじめた。
「別にいいわよ。さすがの私も、この異常な暑さをたかがメイドのあんたにどうにかできるなんて思ってないし……ああ、暑い……ひたすらに暑いわ……」
「気象台が今年は近年でもトップクラスの猛暑になると予想していましたが、私もまさかこれほどの暑さになるとは思ってもみませんでした」
「ほんとね。もうこれ猛暑を通り越して激暑でしょ。マジクッソ暑いんですけど……」
「マリア様、お言葉が少々乱れすぎておりますよ」
「暑いから仕方ないでしょ」
もはやあんたをイジメる気力すら湧いてこないわ……。
はぁ、暑い……暑すぎる……。
「ああっ! 命の輝きを体現されているかのような活力に満ち溢れたマリア様が、こんなにもお元気をなくしてしまうなんて!」
アイリーン、こんな暑さだっていうのにあんたはほんと元気ね……。
私よりもあんたの方がよっぽど命の輝きを体現しているでしょ……。
「はぁ……ねぇアイリーン。お父さまと避暑地に行くのはいつの予定だったかしら?」
「王国北部のアリメア高原にあるセレシア家の別荘に行くのは、ちょうど来週の今日のご予定ですね」
「この暑さをあと1週間も我慢しないといけないの? はぁ、死んじゃうよぉ……」
おとぎ話で聞く灼熱地獄ってこんななのかなぁ……。
はぁ……。
あまりの暑さにほんとため息しか出てこないわ……。
なんてことを思っていると、
「ではマリア様、冷たいスイーツなど召し上がりませんか?」
アイリーンが大うちわで扇ぎながらそんなことを提案してきた。
「冷たいスイーツ?」
私は机に突っ伏したまま、お行儀悪く顔だけをアイリーンへと向けた。
お父さまが見たら卒倒すること間違いなしの無作法だけど、あいにくとこの部屋には私とアイリーンしかいない。
「セレシア侯爵邸内を流れる小川に、スイカを沈めて冷やしてあるんですよ。ここの水は地下から湧き出る湧水を使っているので夏でも冷たいんです」
「へー、知らなかったわ」
「スイカは身体を冷やしてくれる食べ物ですし、少しは涼しくなるのではと思いまして準備しておいたんです」
「あらありがとう。なかなか気が利くじゃないの」
「それはもう、栄えあるマリア様の専属メイドを言いつかっておりますから♪」
「……まぁそうよね、私の専属メイドなんだからそれくらいして当然よね。ありがとうなんて言って損したわ。いやだわー、暑くてぼーっとしちゃってたみたい。前言撤回。しゃべってる暇があったらとっとと用意しなさいな、このグズ」
「かしこまりました」
グズと言われてもなぜかちょっと嬉しそうなアイリーンが、部屋の外で待機している控えメイドにスイカを持ってくるように指示を出した。
休日にもかかわらず、強烈な日差しが照り付ける屋外を避けて自分の部屋にこもっていた私は、あまりの暑さに机に突っ伏してしまった。
「も、申し訳ありません!」
パタパタパタパタ!
専属メイドのアイリーンが必死に大うちわで扇いでくれるものの、もはやうちわで扇ぐ程度では焼け石に水だった。
「今年はいつになく暑いわね……はぁ、汗が止まらないわ……なんかもう溶けてバターになっちゃいそうな気分……」
「も、申し訳ありません!」
パタパタパタパタ!
私の呟きを耳にしたアイリーンが、さらに必死な様子で扇ぎはじめた。
「別にいいわよ。さすがの私も、この異常な暑さをたかがメイドのあんたにどうにかできるなんて思ってないし……ああ、暑い……ひたすらに暑いわ……」
「気象台が今年は近年でもトップクラスの猛暑になると予想していましたが、私もまさかこれほどの暑さになるとは思ってもみませんでした」
「ほんとね。もうこれ猛暑を通り越して激暑でしょ。マジクッソ暑いんですけど……」
「マリア様、お言葉が少々乱れすぎておりますよ」
「暑いから仕方ないでしょ」
もはやあんたをイジメる気力すら湧いてこないわ……。
はぁ、暑い……暑すぎる……。
「ああっ! 命の輝きを体現されているかのような活力に満ち溢れたマリア様が、こんなにもお元気をなくしてしまうなんて!」
アイリーン、こんな暑さだっていうのにあんたはほんと元気ね……。
私よりもあんたの方がよっぽど命の輝きを体現しているでしょ……。
「はぁ……ねぇアイリーン。お父さまと避暑地に行くのはいつの予定だったかしら?」
「王国北部のアリメア高原にあるセレシア家の別荘に行くのは、ちょうど来週の今日のご予定ですね」
「この暑さをあと1週間も我慢しないといけないの? はぁ、死んじゃうよぉ……」
おとぎ話で聞く灼熱地獄ってこんななのかなぁ……。
はぁ……。
あまりの暑さにほんとため息しか出てこないわ……。
なんてことを思っていると、
「ではマリア様、冷たいスイーツなど召し上がりませんか?」
アイリーンが大うちわで扇ぎながらそんなことを提案してきた。
「冷たいスイーツ?」
私は机に突っ伏したまま、お行儀悪く顔だけをアイリーンへと向けた。
お父さまが見たら卒倒すること間違いなしの無作法だけど、あいにくとこの部屋には私とアイリーンしかいない。
「セレシア侯爵邸内を流れる小川に、スイカを沈めて冷やしてあるんですよ。ここの水は地下から湧き出る湧水を使っているので夏でも冷たいんです」
「へー、知らなかったわ」
「スイカは身体を冷やしてくれる食べ物ですし、少しは涼しくなるのではと思いまして準備しておいたんです」
「あらありがとう。なかなか気が利くじゃないの」
「それはもう、栄えあるマリア様の専属メイドを言いつかっておりますから♪」
「……まぁそうよね、私の専属メイドなんだからそれくらいして当然よね。ありがとうなんて言って損したわ。いやだわー、暑くてぼーっとしちゃってたみたい。前言撤回。しゃべってる暇があったらとっとと用意しなさいな、このグズ」
「かしこまりました」
グズと言われてもなぜかちょっと嬉しそうなアイリーンが、部屋の外で待機している控えメイドにスイカを持ってくるように指示を出した。