「ふふふ、まぁ当然の結果よね」
いやー、気分がいいわねー。
やっぱり一番上から見下ろす景色は、最っ高に気持ちいいわ。
「さすがですねマリア様。この日のために用意した必殺コンボも実にお見事でした」
そう、この日のために私は必殺のコンボを用意していたのだ。
まずは目にも止まらぬ高速の駆け足跳びでスタートすると、
片足二重跳び
↓
ハヤブサ
↓
リットル跳び
↓
三重跳び×2
↓
四重飛び
↓
180度旋回二重跳び×2
という超絶スーパーコンボを華麗に決めて、下々の参加者共の度肝を抜いてやったのだ。
もはや私だけ技の難易度の次元が違っていた。
実は四重跳びだけ、練習での成功率が5割もないくらいだったんだけど。
もちろん本番ではバッチリ成功させてみせた。
なにせ私は神に愛されたスーパーセレブだもの。
本番で勝つ50%の確率を引き当てるのは当然だった。
それと道具職人も、とてもいい仕事をしてくれたわね。
私が今日使っていたのはこの前出した要望をすべて叶えてくれた、まさにスペシャルななわとびだったのだ。
はっきりいって庶民の使っているショボいなわとび(というかただの紐)とは雲泥の差だ。
だって洗濯物をつるす紐で、連続三重跳びができるわけないでしょ?(笑)
貧乏人はこれだから困るわ(爆笑)
このスペシャルななわとびと、芸術作品のごとき高難易度の必殺のコンボ。
今日の私は負ける気がしなかった。
いいえ、今日だけじゃない。
これから先もこの私のなわとびが愚民どもに負けるなんてことは、未来永劫あり得ないわ――!!
「では見事優勝されました侯爵家令嬢マリア=セレシア様から、最後に一言いただけますでしょうか?」
司会の人にコメントを求められた私は、下々の参加者どもを前に声を高々に宣言した。
「もうなわとびを子供の遊びとは言わせないわ。見ての通りなわとびは――高尚で芸術的な究極のスポーツよ!」
表彰台の一番高いところで庶民を見下ろしながら、私は終始ご満悦だった。
――しかし。
なわとびにおける私の覇権はそう長くは続かなかった。
後日。
「マリア様。なわとびを推進する国家プロジェクトが始動するそうですな」
セバスチャンが華麗に五重跳びをしてみせながら言った。
「ちょっとやっただけで五重跳びをしちゃうだなんて、あなたってほんと何やらせてもすごいわねぇ……」
堅っ苦しい執事服を着たまま、息すら切らさずになんなく五重跳びを連発してみせるセバスチャン。
「それもこれも、マリア様の考案されたこの『マリアスペシャル』と呼ばれる競技用なわとびが、大変素晴らしいアイテムだからですな。本当に驚くほどによく回ってくれます」
なわとびを終えたセバスチャンは、感心したような表情で手の中にあるなわとびをしげしげと見つめた。
そう。
私が作らせたスペシャルなわとび。
私はこの製造技術を秘匿することで、道具の優位によってなわとび覇権を維持しようとしたのだが。
大会の後、少ししてからお父さまにこう言われてしまったのだ。
~以下、回想~
「この前マリアが提案してくれた『国民の健康増進と生涯運動の推進のための施策について。なわとびのもたらす各種の効能の検証。および遊びを通して運動に興味を抱かせるアプローチとしてのなわとび大会』の件なのだがね」
「え? ああはい……」
そう言えばそんな名目をセバスチャンにでっちあげてもらって、なわとび大会を開いてもらいたんだっけ……。
すっかり忘れちゃってたわ。
「あれ以来、王都でなわとびへの関心が急激に高まったんだ」
「あら、そうなのですねお父さま。それは良かったですわね』
「それで小耳にはさんだのだが、マリアは大会用にスペシャルななわとびを作らせたそうじゃないかい」
「ええまぁ、はい」
なんだか嫌な予感がしてきたんだけど、私の気のせいよね?
「この関心を一過性のものににとどめないためには、なわとびの本当の楽しさが同時に広まる必要があるんだ。そのためにも、マリアの考案したなわとびを量産することができないかなと考えているんだけれど、マリアはどう思うかな?』
「……とても素晴らしいお考えだと思います(涙)」
「そうかそうか! マリアならそう言ってくれると思ったよ! さすがは私の自慢の娘だね!」
~~回想終了~~
こうして私が作らせたスペシャルなわとびの技術データをもとに、庶民で買えるように廉価に仕立て直した新型なわとび――通称「マリアスペシャル」が量産され、王国中で爆発的な大ヒットとなった。
それによってなわとびのレベルは目を見張るスピードで進化を遂げることになり。
特に王都では、なわとびが健康と娯楽を兼ね備えた最先端スポーツとして、一大ムーブメントを引き起こしたのだった。
今やいたるところでなわとびを楽しむ老若男女や、ハイレベルななわとび大会を目にすることができる。
こうしてわたしのなわとび覇権は速攻で終わってしまった。
「どうしてこうなった……?」
体操服姿でため息をつきながら見上げた空は、憎たらしいくらいに青かった。
いやー、気分がいいわねー。
やっぱり一番上から見下ろす景色は、最っ高に気持ちいいわ。
「さすがですねマリア様。この日のために用意した必殺コンボも実にお見事でした」
そう、この日のために私は必殺のコンボを用意していたのだ。
まずは目にも止まらぬ高速の駆け足跳びでスタートすると、
片足二重跳び
↓
ハヤブサ
↓
リットル跳び
↓
三重跳び×2
↓
四重飛び
↓
180度旋回二重跳び×2
という超絶スーパーコンボを華麗に決めて、下々の参加者共の度肝を抜いてやったのだ。
もはや私だけ技の難易度の次元が違っていた。
実は四重跳びだけ、練習での成功率が5割もないくらいだったんだけど。
もちろん本番ではバッチリ成功させてみせた。
なにせ私は神に愛されたスーパーセレブだもの。
本番で勝つ50%の確率を引き当てるのは当然だった。
それと道具職人も、とてもいい仕事をしてくれたわね。
私が今日使っていたのはこの前出した要望をすべて叶えてくれた、まさにスペシャルななわとびだったのだ。
はっきりいって庶民の使っているショボいなわとび(というかただの紐)とは雲泥の差だ。
だって洗濯物をつるす紐で、連続三重跳びができるわけないでしょ?(笑)
貧乏人はこれだから困るわ(爆笑)
このスペシャルななわとびと、芸術作品のごとき高難易度の必殺のコンボ。
今日の私は負ける気がしなかった。
いいえ、今日だけじゃない。
これから先もこの私のなわとびが愚民どもに負けるなんてことは、未来永劫あり得ないわ――!!
「では見事優勝されました侯爵家令嬢マリア=セレシア様から、最後に一言いただけますでしょうか?」
司会の人にコメントを求められた私は、下々の参加者どもを前に声を高々に宣言した。
「もうなわとびを子供の遊びとは言わせないわ。見ての通りなわとびは――高尚で芸術的な究極のスポーツよ!」
表彰台の一番高いところで庶民を見下ろしながら、私は終始ご満悦だった。
――しかし。
なわとびにおける私の覇権はそう長くは続かなかった。
後日。
「マリア様。なわとびを推進する国家プロジェクトが始動するそうですな」
セバスチャンが華麗に五重跳びをしてみせながら言った。
「ちょっとやっただけで五重跳びをしちゃうだなんて、あなたってほんと何やらせてもすごいわねぇ……」
堅っ苦しい執事服を着たまま、息すら切らさずになんなく五重跳びを連発してみせるセバスチャン。
「それもこれも、マリア様の考案されたこの『マリアスペシャル』と呼ばれる競技用なわとびが、大変素晴らしいアイテムだからですな。本当に驚くほどによく回ってくれます」
なわとびを終えたセバスチャンは、感心したような表情で手の中にあるなわとびをしげしげと見つめた。
そう。
私が作らせたスペシャルなわとび。
私はこの製造技術を秘匿することで、道具の優位によってなわとび覇権を維持しようとしたのだが。
大会の後、少ししてからお父さまにこう言われてしまったのだ。
~以下、回想~
「この前マリアが提案してくれた『国民の健康増進と生涯運動の推進のための施策について。なわとびのもたらす各種の効能の検証。および遊びを通して運動に興味を抱かせるアプローチとしてのなわとび大会』の件なのだがね」
「え? ああはい……」
そう言えばそんな名目をセバスチャンにでっちあげてもらって、なわとび大会を開いてもらいたんだっけ……。
すっかり忘れちゃってたわ。
「あれ以来、王都でなわとびへの関心が急激に高まったんだ」
「あら、そうなのですねお父さま。それは良かったですわね』
「それで小耳にはさんだのだが、マリアは大会用にスペシャルななわとびを作らせたそうじゃないかい」
「ええまぁ、はい」
なんだか嫌な予感がしてきたんだけど、私の気のせいよね?
「この関心を一過性のものににとどめないためには、なわとびの本当の楽しさが同時に広まる必要があるんだ。そのためにも、マリアの考案したなわとびを量産することができないかなと考えているんだけれど、マリアはどう思うかな?』
「……とても素晴らしいお考えだと思います(涙)」
「そうかそうか! マリアならそう言ってくれると思ったよ! さすがは私の自慢の娘だね!」
~~回想終了~~
こうして私が作らせたスペシャルなわとびの技術データをもとに、庶民で買えるように廉価に仕立て直した新型なわとび――通称「マリアスペシャル」が量産され、王国中で爆発的な大ヒットとなった。
それによってなわとびのレベルは目を見張るスピードで進化を遂げることになり。
特に王都では、なわとびが健康と娯楽を兼ね備えた最先端スポーツとして、一大ムーブメントを引き起こしたのだった。
今やいたるところでなわとびを楽しむ老若男女や、ハイレベルななわとび大会を目にすることができる。
こうしてわたしのなわとび覇権は速攻で終わってしまった。
「どうしてこうなった……?」
体操服姿でため息をつきながら見上げた空は、憎たらしいくらいに青かった。