ヒュンヒュン!
ぴょんぴょん!
ヒュンヒュン!
ぴょんぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ぴょんぴょんぴょん!
ヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ペシッ!
「あいたっ(>_<)」
いい感じで回っていたなわとびが、私の足に引っかかって動きを止めた。
「大丈夫ですかマリア様!?」
「うーん。さすがに三重跳びの3連続は無理だったかぁ。今日は調子がいいからいけそうな気がしたんだけどなぁ……」
まっ白な体操服に紺のブルマという運動用の格好をした私は、縄跳びを折りたたんで小脇に挟むと、
「マリア様どうぞ」
アイリーンが絶妙のタイミングで恭しく両手で差し出した真っ白なタオルで、額の汗をぬぐった。
「ふぅ、いい汗かいたわー。結構やったし、今日はもう上がりにしようかな」
うーん!
清潔なタオルの、石鹸とお日さまのにおいが実にかぐわしいわね。
「お疲れさまでしたマリア様。ぬるめのお風呂の準備が整っておりますよ」
「あらありがとう」
続いてこれまたタイミングよく差し出された冷たい紅茶を、軽く口に含んでから飲み干す。
「なわとびの練習も今日で早1か月、すっかりお上手になられましたね」
私が一呼吸ついたのをしっかり待ってから、アイリーンが話しはじめた。
「まぁこれくらいは余裕よ余裕。だって私は生まれながらの勝ち組のスーパーセレブなんだもの」
元々は、なわとびは運動強度が高くて短時間で美容やダイエットにとても効果があるらしい、という話を聞いて始めてみたんだけど。
二重跳び、ハヤブサ、リットル跳び、三重跳びなどなど色んな技をマスターするのが楽しくてすっかりはまってしまったのだ。
私って昔からやり始めたら根を詰めるタイプっていうか、結構凝り性なのよね。
「ですがリットル跳びや三重跳びなどの大技は、クラスでもマリア様しかできないのではありませんか? 大会でもあればマリア様の優勝はもう間違いありませんよね」
「ほんとあんたは馬鹿ね。なわとびなんて子供の遊びに、大会なんてあるわけないでしょ」
ま、あったら出てみたい気はするけどね。
だってせっかくこれだけ上手くなったんだもの。
マスターした技の数々を華麗に披露してみたくはあるかな。
私が少し残念に思っていると、
「ないのでしたら、セレシア家の主催で開催すればよいのではありませんか?」
アイリーンがポロっとそんなことをつぶやいた。
「……その手があったか!」
疾きこと風のごとし。
私は早速、お父さまにお願いをして「国民の健康増進と生涯運動の推進がどうたらこうたらうんたらかんたら」という、セバスチャンが考えてくれたもっともらしい名目でなわとびの大会を開催することにした。
言わば自作自演なんだけど、そこはそれ。
なわとびのパフォーマンスについては真っ向勝負で挑むつもりだから、なんの問題もないわけだし。
「もちろんズルはしないわよ。だって私は誇り高きセレシア侯爵家令嬢だもの。私のなわとびで参加者全員、真正面から捻り潰してあげるんだから」
「ですね!」
「じゃあ今日からは放課後に毎日特訓よ。大会当日までにありとあらゆる技をマスターするんだから」
「僭越ながら私もご一緒させていただきたく思います」
「いい心がけね。でもやるからにはあなたにも完璧を目指してもらうわよ? 泣き言は許さないから。死ぬ気で着いてくることね」
「もちろんです。マリア様付きの専属メイドの名を汚すわけにはまいりませんから」
私はなわとび大会に向けて、アイリーンとともに厳しい特訓を重ねた。
さらに特訓と並行して、なわとびの改良にも力を入れる。
セレシア家お抱えの道具職人に話を持っていく。
この道具職人は、かつて近衛騎士団の直属で様々なアイテムを製作・改良した経験を持ち、「神の手」を持つと称された人間国宝にも指定された凄腕の道具職人だ。
今使っているなわとびも、この職人が回りやすいものを考案して作ってくれたんだけど、私はなわとびの更なる進化を求めた。
「どうも縄が太いからかイマイチ速く回らないみたいなのよね。なんとかならない?」
「おそらく空気の抵抗を受けているからでしょうな。空気抵抗が少なくなるように、強度を保てるギリギリを探りつつ、なるべく細くなるように素材を調整してみましょう」
「あ、でも軽すぎるとそれはそれで回りにくいから、適度な重みもつけてね」
「遠心力を回転力に変換するわけですか、なるほど理にかなっておりますな。さすがはマリア様、先ほどから実にポイントを抑えた要望にございます」
「ありがと。それで、いいなわとびは用意できそう?」
「いくつか思いつく素材がございますので、さっそく開発に取りかかります。必ずやマリア様のご希望にそえるなわとびを用意してみせましょう」
「よろしく頼んだわよ。私に相応しいスペシャルななわとびを用意してね」
「はっ、お任せくださいませ」
~~~~
そして迎えた大会当日。
私は並みいる男性参加者や体力自慢、現役兵士なんかを全部抑えて、圧倒的一位に輝いた。
ぴょんぴょん!
ヒュンヒュン!
ぴょんぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ぴょんぴょんぴょん!
ヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ぴょん!
ヒュンヒュンヒュン!
ペシッ!
「あいたっ(>_<)」
いい感じで回っていたなわとびが、私の足に引っかかって動きを止めた。
「大丈夫ですかマリア様!?」
「うーん。さすがに三重跳びの3連続は無理だったかぁ。今日は調子がいいからいけそうな気がしたんだけどなぁ……」
まっ白な体操服に紺のブルマという運動用の格好をした私は、縄跳びを折りたたんで小脇に挟むと、
「マリア様どうぞ」
アイリーンが絶妙のタイミングで恭しく両手で差し出した真っ白なタオルで、額の汗をぬぐった。
「ふぅ、いい汗かいたわー。結構やったし、今日はもう上がりにしようかな」
うーん!
清潔なタオルの、石鹸とお日さまのにおいが実にかぐわしいわね。
「お疲れさまでしたマリア様。ぬるめのお風呂の準備が整っておりますよ」
「あらありがとう」
続いてこれまたタイミングよく差し出された冷たい紅茶を、軽く口に含んでから飲み干す。
「なわとびの練習も今日で早1か月、すっかりお上手になられましたね」
私が一呼吸ついたのをしっかり待ってから、アイリーンが話しはじめた。
「まぁこれくらいは余裕よ余裕。だって私は生まれながらの勝ち組のスーパーセレブなんだもの」
元々は、なわとびは運動強度が高くて短時間で美容やダイエットにとても効果があるらしい、という話を聞いて始めてみたんだけど。
二重跳び、ハヤブサ、リットル跳び、三重跳びなどなど色んな技をマスターするのが楽しくてすっかりはまってしまったのだ。
私って昔からやり始めたら根を詰めるタイプっていうか、結構凝り性なのよね。
「ですがリットル跳びや三重跳びなどの大技は、クラスでもマリア様しかできないのではありませんか? 大会でもあればマリア様の優勝はもう間違いありませんよね」
「ほんとあんたは馬鹿ね。なわとびなんて子供の遊びに、大会なんてあるわけないでしょ」
ま、あったら出てみたい気はするけどね。
だってせっかくこれだけ上手くなったんだもの。
マスターした技の数々を華麗に披露してみたくはあるかな。
私が少し残念に思っていると、
「ないのでしたら、セレシア家の主催で開催すればよいのではありませんか?」
アイリーンがポロっとそんなことをつぶやいた。
「……その手があったか!」
疾きこと風のごとし。
私は早速、お父さまにお願いをして「国民の健康増進と生涯運動の推進がどうたらこうたらうんたらかんたら」という、セバスチャンが考えてくれたもっともらしい名目でなわとびの大会を開催することにした。
言わば自作自演なんだけど、そこはそれ。
なわとびのパフォーマンスについては真っ向勝負で挑むつもりだから、なんの問題もないわけだし。
「もちろんズルはしないわよ。だって私は誇り高きセレシア侯爵家令嬢だもの。私のなわとびで参加者全員、真正面から捻り潰してあげるんだから」
「ですね!」
「じゃあ今日からは放課後に毎日特訓よ。大会当日までにありとあらゆる技をマスターするんだから」
「僭越ながら私もご一緒させていただきたく思います」
「いい心がけね。でもやるからにはあなたにも完璧を目指してもらうわよ? 泣き言は許さないから。死ぬ気で着いてくることね」
「もちろんです。マリア様付きの専属メイドの名を汚すわけにはまいりませんから」
私はなわとび大会に向けて、アイリーンとともに厳しい特訓を重ねた。
さらに特訓と並行して、なわとびの改良にも力を入れる。
セレシア家お抱えの道具職人に話を持っていく。
この道具職人は、かつて近衛騎士団の直属で様々なアイテムを製作・改良した経験を持ち、「神の手」を持つと称された人間国宝にも指定された凄腕の道具職人だ。
今使っているなわとびも、この職人が回りやすいものを考案して作ってくれたんだけど、私はなわとびの更なる進化を求めた。
「どうも縄が太いからかイマイチ速く回らないみたいなのよね。なんとかならない?」
「おそらく空気の抵抗を受けているからでしょうな。空気抵抗が少なくなるように、強度を保てるギリギリを探りつつ、なるべく細くなるように素材を調整してみましょう」
「あ、でも軽すぎるとそれはそれで回りにくいから、適度な重みもつけてね」
「遠心力を回転力に変換するわけですか、なるほど理にかなっておりますな。さすがはマリア様、先ほどから実にポイントを抑えた要望にございます」
「ありがと。それで、いいなわとびは用意できそう?」
「いくつか思いつく素材がございますので、さっそく開発に取りかかります。必ずやマリア様のご希望にそえるなわとびを用意してみせましょう」
「よろしく頼んだわよ。私に相応しいスペシャルななわとびを用意してね」
「はっ、お任せくださいませ」
~~~~
そして迎えた大会当日。
私は並みいる男性参加者や体力自慢、現役兵士なんかを全部抑えて、圧倒的一位に輝いた。