【ケース1.焼きおにぎり】
「マリア様マリア様、焼きおにぎりですって。おにぎりというヤパルナの携帯食を、さらに焼いたものだそうですよ。香ばしいいい匂いがしてきますね」
「嫌だわ、庶民が手でこねたものなんてとても口に入れられないもの。試しにあんたが食べてみなさい。で、感想を聞かせてちょうだい」
「はぁ……もぐもぐ……。外はカリッと中はもちもちで、とても美味しいです♪」
【ケース2.ラーメン】
「マリア様マリア様、ラーメンですって。シーナで生まれた後にヤパルナで大発展を遂げた料理で、熱いまま麺をすすって食べるんだそうですよ」
「この名門貴族セレシア家の令嬢たるマリア=セレシアが、パスタをすすって食べるなんてそんな下品なことをできるわけないでしょ!」
「パスタじゃなくてラーメンですよ?」
「名前なんてどうでもいいわよ。これもあんたが食べて感想を言いなさい」
「はぁ……ずずー、ずずー……。むむっ、これは!?」
「どうしたの? そんな驚いた顔をして?」
「スープはこってりとしていてなおかつ深みがあって、でもギリギリくどくはなくて。ちぢれた麺は一見柔らかそうに見えますが、芯にはちゃんとコシが残っていて。しかもスープにしっかり絡んでくれるおかげで、口の中に麺が入る時にスープを一緒に運んでくれるんです。スープはこれは鶏と豚をベースに少し魚介を足しているのかな? 実に味わい深いですね、まるで口の中で一つの世界が完成しているかのようです!」
「クソ長い。一言で言いなさい」
「とても美味しかったです♪」
【ケース3.三食団子】
「あら、これは見た目が可愛らしいスイーツね」
「これは三食団子という、お米でできたお菓子ですね」
「へぇ、お米でできてるんだ。もぐもぐ……。あらやだ、優しい甘みですごく美味しいじゃない。とても気に入ったわ。ねえ店主、持ち帰って明日学校で配るからここに置いてあるの全部買うわね」
「ではスタッフを呼んで来て馬車まで運び込んでもらいますね」
【ケース4.たこ焼き】
……その屋台の周辺には人っ子一人いなかった。
まるでその場だけ異空間であるかのように人に忌諱された領域。
そこにあったのは――。
「なにこれ?」
「マリア様、これはたこ焼きという軽食だそうです」
「たこ焼き? 初めて聞く言葉だから説明してくれる? あの焼いたプチシュークリームみたいなの中に、多分何か入っているのよね?」
「えっとですね、タコというのはどうもオクトパスのことみたいですね。足が8本あって海にいて、まるで悪魔のような姿をしたあの謎の生物です。本でしか見たことないんですけど、あれって食べられるんですね。びっくりですよ」
事前勉強の知識を生かして丁寧に解説してくれるアイリーンに、
「そうね。じゃあ試しにあなたが食べてみて」
私は笑顔で言った。
「いえあの……私もちょっとオクトパスは遠慮したいかなと……」
何でもイエスと言うはずのアイリーンが珍しく言いよどむ。
完全に逃げ腰だった。
それを見た私の中に嫌らしい嗜虐心が湧き上がってくる。
「食べなさい」
「えっと、その……」
「食べなさい」
「あの、マリア様? オクトパスを食べるというのはちょっと勇気がいりまして……だってオクトパスですよ? あのヌルヌルしてゾゾゾって感じのオクトパスですよ? 本当に食べれるんですか?」
なんでも言うことを聞くアイリーンがこうまで嫌がるのも無理はなかった。
なにせオクトパスは「悪魔の使い」だの「食べたら早死にする呪いの生物」だのと呼ばれることもある、忌み嫌われている生物なのだから。
それを食べろと言われれば誰もが尻込みするだろう。
だからこそ私はアイリーンにオクトパスを食べることを強いるわけなんだけど。
むふふふ!
「マリア様マリア様、焼きおにぎりですって。おにぎりというヤパルナの携帯食を、さらに焼いたものだそうですよ。香ばしいいい匂いがしてきますね」
「嫌だわ、庶民が手でこねたものなんてとても口に入れられないもの。試しにあんたが食べてみなさい。で、感想を聞かせてちょうだい」
「はぁ……もぐもぐ……。外はカリッと中はもちもちで、とても美味しいです♪」
【ケース2.ラーメン】
「マリア様マリア様、ラーメンですって。シーナで生まれた後にヤパルナで大発展を遂げた料理で、熱いまま麺をすすって食べるんだそうですよ」
「この名門貴族セレシア家の令嬢たるマリア=セレシアが、パスタをすすって食べるなんてそんな下品なことをできるわけないでしょ!」
「パスタじゃなくてラーメンですよ?」
「名前なんてどうでもいいわよ。これもあんたが食べて感想を言いなさい」
「はぁ……ずずー、ずずー……。むむっ、これは!?」
「どうしたの? そんな驚いた顔をして?」
「スープはこってりとしていてなおかつ深みがあって、でもギリギリくどくはなくて。ちぢれた麺は一見柔らかそうに見えますが、芯にはちゃんとコシが残っていて。しかもスープにしっかり絡んでくれるおかげで、口の中に麺が入る時にスープを一緒に運んでくれるんです。スープはこれは鶏と豚をベースに少し魚介を足しているのかな? 実に味わい深いですね、まるで口の中で一つの世界が完成しているかのようです!」
「クソ長い。一言で言いなさい」
「とても美味しかったです♪」
【ケース3.三食団子】
「あら、これは見た目が可愛らしいスイーツね」
「これは三食団子という、お米でできたお菓子ですね」
「へぇ、お米でできてるんだ。もぐもぐ……。あらやだ、優しい甘みですごく美味しいじゃない。とても気に入ったわ。ねえ店主、持ち帰って明日学校で配るからここに置いてあるの全部買うわね」
「ではスタッフを呼んで来て馬車まで運び込んでもらいますね」
【ケース4.たこ焼き】
……その屋台の周辺には人っ子一人いなかった。
まるでその場だけ異空間であるかのように人に忌諱された領域。
そこにあったのは――。
「なにこれ?」
「マリア様、これはたこ焼きという軽食だそうです」
「たこ焼き? 初めて聞く言葉だから説明してくれる? あの焼いたプチシュークリームみたいなの中に、多分何か入っているのよね?」
「えっとですね、タコというのはどうもオクトパスのことみたいですね。足が8本あって海にいて、まるで悪魔のような姿をしたあの謎の生物です。本でしか見たことないんですけど、あれって食べられるんですね。びっくりですよ」
事前勉強の知識を生かして丁寧に解説してくれるアイリーンに、
「そうね。じゃあ試しにあなたが食べてみて」
私は笑顔で言った。
「いえあの……私もちょっとオクトパスは遠慮したいかなと……」
何でもイエスと言うはずのアイリーンが珍しく言いよどむ。
完全に逃げ腰だった。
それを見た私の中に嫌らしい嗜虐心が湧き上がってくる。
「食べなさい」
「えっと、その……」
「食べなさい」
「あの、マリア様? オクトパスを食べるというのはちょっと勇気がいりまして……だってオクトパスですよ? あのヌルヌルしてゾゾゾって感じのオクトパスですよ? 本当に食べれるんですか?」
なんでも言うことを聞くアイリーンがこうまで嫌がるのも無理はなかった。
なにせオクトパスは「悪魔の使い」だの「食べたら早死にする呪いの生物」だのと呼ばれることもある、忌み嫌われている生物なのだから。
それを食べろと言われれば誰もが尻込みするだろう。
だからこそ私はアイリーンにオクトパスを食べることを強いるわけなんだけど。
むふふふ!