とある日。
私は専属メイドのアイリーンを連れて、王都の外国人居留地で開催される「ワールド・フェスティバル」に遊びに来ていた。
もちろん昨今の異文化ブームの煽りを受け、庶民でクソみたいにごった返すであろうイベント当日ではなく、開催日の前日に行われる関係者とVIPのみの特別招待に招かれている。
そして今回はいつものようにお父さまの名代としてではなく、異文化交流促進の功労者として私が直々に名指しで招待されていた。
はぁ……だるい。
正直、外国人居留地にはいい思い出がないからあまり来たくなかったんだけどなぁ。
ここに来るたびに、着物ドレスを独占できなかったことを思い出さずにはいられない私である。
「あの時は着物ドレスで着飾って令嬢カーストの頂点を極めたっていうのに……あーあ、短い栄華だったわねぇ。人生の儚さをひしひしと感じさせられてしまうわ」
私はだらだらブラブラと異国風の物品が並ぶ屋台を見て回りながら、今日も今日とて側に控えているアイリーンに愚痴をこぼす。
「まぁまぁそう仰らずに。また何かよい掘り出し物があるかもしれませんよ?」
「あんたはほんとどうしようもないバカね。あのレベルの掘り出し物がそうポンポンあるわけないでしょうが」
素人意見丸出しなアイリーンの言葉に、私は秒でダメ出しをする。
「申し訳ありませんでした」
すると謝罪の言葉と共に、アイリーンが大きく頭を下げた。
前日の晩ご飯のスープを水で薄めてかさ増しした朝スープのごとき薄っぺらい発言をしたアイリーンに、私がダメ出しをする。
判を押したようないつものやりとりだ。
でもなんとなく。
この子って私が気持よくマウントを取れるように、わざと素人丸出しの意見を言ってお膳立てしてくれているような気がするような、しないような……?
ま、考えすぎよね。
頭がよほどイカれたドMの雌豚変態メイドでもない限り、そんなアホな真似はしないでしょうし。
ちなみにこのスープの例え話は、なんか庶民の間で最近流行ってる比喩らしい。
貧乏な庶民のクラスメイト――なんか私を聖女マリアとか言って崇拝してくれるので庶民だけど少しだけ目をかけてやっている――がこの前使っていた。
っていうかさ?
前日のスープをとっておいて翌朝に薄めて飲むとか、マジでエンガチョなんですけど。
捨てるでしょ普通。
まったくこれだから庶民は理解不能だわ。
「それに以前までは誰もここには見向きもしなかったけど。あの一件以来、大手服飾ブランドが着物ドレスに続く異国風の新スタイルを取り込むんだって、やっきになって斬新なアイデアを探し回ってるって話だもの」
「そうだったのですね」
「だから仮にそんなものがあったとしても、とっくの昔に狩り尽くされているわよ」
ちょっと前にお父さまがそんなことを言っていたのだ。
しかも服飾業界に限らず、今や多種多様な商人やデザイナーたちが外国人居留地の異国文化に目をつけ始めたらしい。
おかげで外国人居留地への投資や開発が一気に増えて、こうやって異文化交流と異文化体験を兼ね合わせた大々的なイベントも開かれるようになったのだとかなんとか。
「それもこれもマリア様が着物ドレスを発見して、世間に大々的に広めたおかげではありませんか。さすがですマリア様。お側に居られて私はとても幸せですよ」
「ふふふ……まぁ、そうよね、さすが私よね」
「ええ、まったくです」
「ま、あの時はお父さまにはすっごく褒められて臨時のお小遣いもドーンともらったし?(キャッシュで1億5千万) 着物を奪った第二王女殿下には、まぁ一応この前のピンチで助けてもらった的なこともなくはなかったし? 私は心が広いからここは許してあげようかしら」
そう、そもそもいい思い出がないこの場所にわざわざ私が足を運んだのは、招待主の名前が第二王女の名前だったからだ。
この「ワールド・フェスティバル」は、王家が資金を出して開催したイベントなのだった。
さすがの私も王族直々のご指名を断るなんてことはできはしない。
そんなことしたらお父さまが泣いてしまわれるもの。
私は専属メイドのアイリーンを連れて、王都の外国人居留地で開催される「ワールド・フェスティバル」に遊びに来ていた。
もちろん昨今の異文化ブームの煽りを受け、庶民でクソみたいにごった返すであろうイベント当日ではなく、開催日の前日に行われる関係者とVIPのみの特別招待に招かれている。
そして今回はいつものようにお父さまの名代としてではなく、異文化交流促進の功労者として私が直々に名指しで招待されていた。
はぁ……だるい。
正直、外国人居留地にはいい思い出がないからあまり来たくなかったんだけどなぁ。
ここに来るたびに、着物ドレスを独占できなかったことを思い出さずにはいられない私である。
「あの時は着物ドレスで着飾って令嬢カーストの頂点を極めたっていうのに……あーあ、短い栄華だったわねぇ。人生の儚さをひしひしと感じさせられてしまうわ」
私はだらだらブラブラと異国風の物品が並ぶ屋台を見て回りながら、今日も今日とて側に控えているアイリーンに愚痴をこぼす。
「まぁまぁそう仰らずに。また何かよい掘り出し物があるかもしれませんよ?」
「あんたはほんとどうしようもないバカね。あのレベルの掘り出し物がそうポンポンあるわけないでしょうが」
素人意見丸出しなアイリーンの言葉に、私は秒でダメ出しをする。
「申し訳ありませんでした」
すると謝罪の言葉と共に、アイリーンが大きく頭を下げた。
前日の晩ご飯のスープを水で薄めてかさ増しした朝スープのごとき薄っぺらい発言をしたアイリーンに、私がダメ出しをする。
判を押したようないつものやりとりだ。
でもなんとなく。
この子って私が気持よくマウントを取れるように、わざと素人丸出しの意見を言ってお膳立てしてくれているような気がするような、しないような……?
ま、考えすぎよね。
頭がよほどイカれたドMの雌豚変態メイドでもない限り、そんなアホな真似はしないでしょうし。
ちなみにこのスープの例え話は、なんか庶民の間で最近流行ってる比喩らしい。
貧乏な庶民のクラスメイト――なんか私を聖女マリアとか言って崇拝してくれるので庶民だけど少しだけ目をかけてやっている――がこの前使っていた。
っていうかさ?
前日のスープをとっておいて翌朝に薄めて飲むとか、マジでエンガチョなんですけど。
捨てるでしょ普通。
まったくこれだから庶民は理解不能だわ。
「それに以前までは誰もここには見向きもしなかったけど。あの一件以来、大手服飾ブランドが着物ドレスに続く異国風の新スタイルを取り込むんだって、やっきになって斬新なアイデアを探し回ってるって話だもの」
「そうだったのですね」
「だから仮にそんなものがあったとしても、とっくの昔に狩り尽くされているわよ」
ちょっと前にお父さまがそんなことを言っていたのだ。
しかも服飾業界に限らず、今や多種多様な商人やデザイナーたちが外国人居留地の異国文化に目をつけ始めたらしい。
おかげで外国人居留地への投資や開発が一気に増えて、こうやって異文化交流と異文化体験を兼ね合わせた大々的なイベントも開かれるようになったのだとかなんとか。
「それもこれもマリア様が着物ドレスを発見して、世間に大々的に広めたおかげではありませんか。さすがですマリア様。お側に居られて私はとても幸せですよ」
「ふふふ……まぁ、そうよね、さすが私よね」
「ええ、まったくです」
「ま、あの時はお父さまにはすっごく褒められて臨時のお小遣いもドーンともらったし?(キャッシュで1億5千万) 着物を奪った第二王女殿下には、まぁ一応この前のピンチで助けてもらった的なこともなくはなかったし? 私は心が広いからここは許してあげようかしら」
そう、そもそもいい思い出がないこの場所にわざわざ私が足を運んだのは、招待主の名前が第二王女の名前だったからだ。
この「ワールド・フェスティバル」は、王家が資金を出して開催したイベントなのだった。
さすがの私も王族直々のご指名を断るなんてことはできはしない。
そんなことしたらお父さまが泣いてしまわれるもの。