「この世の真理……ですか?」
アイリーンがよく分からないって顔を見せる。
「そうよ。いい? この世の中にはね、3種類の人間しかいないの」
「3種類……?」
「そうよ。まずは自分、これが一番大事。当然よね」
「はい……それは分かります」
アイリーンはこくんと頷いた。
「次に自分を心から愛してくれるほんの一握りの人たちよ。つまり家族とか親友ね。ただの友達はここには入らないわ」
「う、うん……」
「そして最後に、それ以外の大多数のどうでもいい人間どもよ」
「……? マリアは何を言っているの?」
「様くらいつけなさいな、この下級貴族の妾腹が!」
「ご、ごめんなさいマリア様」
「つまりね、人間っていうのは自分と、自分を愛してくれるごく少数の人間のためだけに生きればいいってことなのよ。それ以外の大多数の人間がどうなろうと、自分に関係ある?」
「それは、ないですけど……」
「ね、簡単な話でしょ。義理の姉たちからのいじめなんていちいち気にせずに無視するか、もしくはやり返せばいいのよ。だって自分を愛してくれない相手は当然、『それ以外の大多数の人間』なんだから」
「あ……」
「そんな奴らのために我慢なんてしないで、自分を優先すればいい。それだけの話よ」
ま、こんなこと言っても実行なんて簡単にできるわけないんだけどね。
そりゃ私みたいな生まれながらのスーパーセレブだったら、周りが忖度とかしてくれるからなんとでもなるんだけど。
でも妾腹のこいつが反抗とかしたら、いじめがより一層エスカレートしちゃったりして(爆笑)
まぁこいつがどうなっても、私には何にも関係のないことだからどうでもいいんだけど。
それこそ、こいつは私にとって「それ以外の大多数のどうなろうと知ったこっちゃない人間」なんだから。
「……そんな生き方をしてもいいんでしょうか?」
「それを私に聞いてどうするの? そうやって自分で考えずに他人任せにしようとするから、あんたはグズだって私は言ってるのよ。それともあんたは私の言うことなら何でも聞く専属メイドなの? そこんとこ、いい加減に分かりなさいな」
「……」
「じゃあね、私はもう行くから。あんたはいつまでもここで好きなだけ泣いていればいいわ」
私は「正論」という名の棍棒でこいつを叩きのめしたことでとても気分が良くなったので、パーリー会場へと戻ることにした。
「あんまり長いこと不在にしてるとお父さまに叱られちゃうもんね~」
私はくるりと背を向けると鼻歌交じりで歩き出した。
「マリア様……マリア=セレシア様。なんて素敵なお方なのでしょうか。今この瞬間、私はあなたに恋をしてしまいました。だから私は今日からマリア様が教えてくれた、マリア様のような素敵な生き方を頑張ってみようと思います。自分の人生を自分で考えて行動しようと思います。自分の大切なもののために命をかけようと思います。だから待っていてください。きっと必ずもう一度、マリア様に会いにまいりますので――」
背中の向こうでアイリーンが何かを言っていたけれど。
もうこれっぽっちも興味がなかったので、私は完全に無視して歩いていった。
~~6年後~~
「はふぅ、アイリーンの入れる紅茶は本当に絶妙ね。もはや文句の付け所もないわ」
「お褒めいただきありがとうございます」
「他の仕事も早いしメンタルは異様に硬いし。これからも私に仕えることを許してあげるわよ。泣いて感謝しなさいな」
「ありがとうございます。それもこれもあの時マリア様に声をかけていただいたおかげですから」
「なんの話よ? あんたは時々意味不明なことを言うことだけが玉に瑕よね」
「えへへ、申し訳ございません」
マリアとアイリーン。
6年前のあの日、ほんの一瞬だけ交差した2人の人生は、今ここで再び主従として交わり。
今日も今日とて仲睦まじい主従関係を過ごしているのだった。
アイリーンがよく分からないって顔を見せる。
「そうよ。いい? この世の中にはね、3種類の人間しかいないの」
「3種類……?」
「そうよ。まずは自分、これが一番大事。当然よね」
「はい……それは分かります」
アイリーンはこくんと頷いた。
「次に自分を心から愛してくれるほんの一握りの人たちよ。つまり家族とか親友ね。ただの友達はここには入らないわ」
「う、うん……」
「そして最後に、それ以外の大多数のどうでもいい人間どもよ」
「……? マリアは何を言っているの?」
「様くらいつけなさいな、この下級貴族の妾腹が!」
「ご、ごめんなさいマリア様」
「つまりね、人間っていうのは自分と、自分を愛してくれるごく少数の人間のためだけに生きればいいってことなのよ。それ以外の大多数の人間がどうなろうと、自分に関係ある?」
「それは、ないですけど……」
「ね、簡単な話でしょ。義理の姉たちからのいじめなんていちいち気にせずに無視するか、もしくはやり返せばいいのよ。だって自分を愛してくれない相手は当然、『それ以外の大多数の人間』なんだから」
「あ……」
「そんな奴らのために我慢なんてしないで、自分を優先すればいい。それだけの話よ」
ま、こんなこと言っても実行なんて簡単にできるわけないんだけどね。
そりゃ私みたいな生まれながらのスーパーセレブだったら、周りが忖度とかしてくれるからなんとでもなるんだけど。
でも妾腹のこいつが反抗とかしたら、いじめがより一層エスカレートしちゃったりして(爆笑)
まぁこいつがどうなっても、私には何にも関係のないことだからどうでもいいんだけど。
それこそ、こいつは私にとって「それ以外の大多数のどうなろうと知ったこっちゃない人間」なんだから。
「……そんな生き方をしてもいいんでしょうか?」
「それを私に聞いてどうするの? そうやって自分で考えずに他人任せにしようとするから、あんたはグズだって私は言ってるのよ。それともあんたは私の言うことなら何でも聞く専属メイドなの? そこんとこ、いい加減に分かりなさいな」
「……」
「じゃあね、私はもう行くから。あんたはいつまでもここで好きなだけ泣いていればいいわ」
私は「正論」という名の棍棒でこいつを叩きのめしたことでとても気分が良くなったので、パーリー会場へと戻ることにした。
「あんまり長いこと不在にしてるとお父さまに叱られちゃうもんね~」
私はくるりと背を向けると鼻歌交じりで歩き出した。
「マリア様……マリア=セレシア様。なんて素敵なお方なのでしょうか。今この瞬間、私はあなたに恋をしてしまいました。だから私は今日からマリア様が教えてくれた、マリア様のような素敵な生き方を頑張ってみようと思います。自分の人生を自分で考えて行動しようと思います。自分の大切なもののために命をかけようと思います。だから待っていてください。きっと必ずもう一度、マリア様に会いにまいりますので――」
背中の向こうでアイリーンが何かを言っていたけれど。
もうこれっぽっちも興味がなかったので、私は完全に無視して歩いていった。
~~6年後~~
「はふぅ、アイリーンの入れる紅茶は本当に絶妙ね。もはや文句の付け所もないわ」
「お褒めいただきありがとうございます」
「他の仕事も早いしメンタルは異様に硬いし。これからも私に仕えることを許してあげるわよ。泣いて感謝しなさいな」
「ありがとうございます。それもこれもあの時マリア様に声をかけていただいたおかげですから」
「なんの話よ? あんたは時々意味不明なことを言うことだけが玉に瑕よね」
「えへへ、申し訳ございません」
マリアとアイリーン。
6年前のあの日、ほんの一瞬だけ交差した2人の人生は、今ここで再び主従として交わり。
今日も今日とて仲睦まじい主従関係を過ごしているのだった。