物語の舞台は約6年前、マリアが11歳の頃のお話です。
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この日、私はお父さまに連れられて、とある貴族主催のしょぼいパーリーに参加していた。
「あー、やっと抜け出せたわ……下級貴族しかいないし、マジくっそだるいんですけど……」
お父さまがお仕事のお話合いのためにパーリーを抜けたのを確認した私は、速攻で会場を脱出した。
今は辟易した気分を少しでも良くしようと、たいして大きくもない庭を歩いて回っている。
「こんなチンケな庭でも、まだ自然というだけで見る価値がなくもないわね。――って誰かいるわね?」
私が一人で散策していると、人口の小川の側に同い年くらいの女の子がいるのが目に留まった。
「うっ……ぐすっ……もう死んじゃおうかな……」
なんか泣いているようだ。
よーし、暇つぶしに声でもかけてあげよう。
「あんた、こんなところでなに泣いてるのよ?」
私がその女の子に声をかけると、女の子はハッとしたように振り返った。
綺麗なドレスを着ていて可愛らしい顔立ちをしている。
貴族の娘みたいね。
――ああそういえば。
主賓の平凡貴族の娘の一人だったっけ?
すみっこの方に立っていた気がする。
「……」
しかし私が話しかけたっていうのに、女の子は泣きべそをかいたまま黙ったままでいる。
「ちょっとあんた。私が――このマリア=セレシアが尋ねたんだから何とか言いなさいよねこのグズ。口もきけないの?」
無視された私はイラっとして少しきつめに問い詰める。
「あぅ……マリア=セレシア?」
「そうよ。セレシア侯爵家のマリア=セレシアよ。名前くらいは知ってるでしょ。で、あんたは?」
「アイリーン=シュミットです……」
シュミット子爵。
やっぱり今日の主催貴族の子供だったか。
「それで? あんたはこんなところで何で泣いてたのよ? 聞いてあげるから理由を教えなさいな」
「えっと……ずっとお姉さんたちにいじめられてて……私のお母さんはお妾さんだから……今日も酷いことばっかり言われて……死ねって……だから悲しくなってここで泣いていたんです……私って死んだ方がいいのかな……」
「ふーん、あっそ。良くある話ね。そんなくだらない理由で、ここで一人で惨めにめそめそ泣いていたわけね」
「……ぐすっ」
妾腹の子供が、正妻の子供にいじめられる。
地べたを這いずり回るアリの数ほどよく聞く話だ。
「ま、あんたがそんなだからいじめられるのよ。そうやっていつまでも弱者のままでめそめそと一人で泣いてなさいな。それで死にたきゃ死になさい。あー、超つまんないの。話しかけて損しちゃった」
私は速攻でこいつへの興味を失った。
「そんな言い方酷いです……ぐすっ」
「酷いですって? じゃあなに? 私があんたに優しくしてやったら、あんたへの姉たちからのいじめがなくなるわけ?」
「それは……」
「はん! そうやって回りにばっかり原因を求めて、言い訳ばっかしてればいいじゃないこのグズ! あんたみたいなのにはそれがお似合いよ」
「う……酷い、ぐすっ、酷いです……」
私の「正論」でぶっ叩かれたアイリーンが、またうざく泣き始めた。
「はぁ? グズにグズって言って何が悪いのよ? いいわ、せっかくだから今からあんたに、この世の真理ってものを教えてあげるわ」
私は両手を腰に手を当てると、胸を張ってそう言った。
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この日、私はお父さまに連れられて、とある貴族主催のしょぼいパーリーに参加していた。
「あー、やっと抜け出せたわ……下級貴族しかいないし、マジくっそだるいんですけど……」
お父さまがお仕事のお話合いのためにパーリーを抜けたのを確認した私は、速攻で会場を脱出した。
今は辟易した気分を少しでも良くしようと、たいして大きくもない庭を歩いて回っている。
「こんなチンケな庭でも、まだ自然というだけで見る価値がなくもないわね。――って誰かいるわね?」
私が一人で散策していると、人口の小川の側に同い年くらいの女の子がいるのが目に留まった。
「うっ……ぐすっ……もう死んじゃおうかな……」
なんか泣いているようだ。
よーし、暇つぶしに声でもかけてあげよう。
「あんた、こんなところでなに泣いてるのよ?」
私がその女の子に声をかけると、女の子はハッとしたように振り返った。
綺麗なドレスを着ていて可愛らしい顔立ちをしている。
貴族の娘みたいね。
――ああそういえば。
主賓の平凡貴族の娘の一人だったっけ?
すみっこの方に立っていた気がする。
「……」
しかし私が話しかけたっていうのに、女の子は泣きべそをかいたまま黙ったままでいる。
「ちょっとあんた。私が――このマリア=セレシアが尋ねたんだから何とか言いなさいよねこのグズ。口もきけないの?」
無視された私はイラっとして少しきつめに問い詰める。
「あぅ……マリア=セレシア?」
「そうよ。セレシア侯爵家のマリア=セレシアよ。名前くらいは知ってるでしょ。で、あんたは?」
「アイリーン=シュミットです……」
シュミット子爵。
やっぱり今日の主催貴族の子供だったか。
「それで? あんたはこんなところで何で泣いてたのよ? 聞いてあげるから理由を教えなさいな」
「えっと……ずっとお姉さんたちにいじめられてて……私のお母さんはお妾さんだから……今日も酷いことばっかり言われて……死ねって……だから悲しくなってここで泣いていたんです……私って死んだ方がいいのかな……」
「ふーん、あっそ。良くある話ね。そんなくだらない理由で、ここで一人で惨めにめそめそ泣いていたわけね」
「……ぐすっ」
妾腹の子供が、正妻の子供にいじめられる。
地べたを這いずり回るアリの数ほどよく聞く話だ。
「ま、あんたがそんなだからいじめられるのよ。そうやっていつまでも弱者のままでめそめそと一人で泣いてなさいな。それで死にたきゃ死になさい。あー、超つまんないの。話しかけて損しちゃった」
私は速攻でこいつへの興味を失った。
「そんな言い方酷いです……ぐすっ」
「酷いですって? じゃあなに? 私があんたに優しくしてやったら、あんたへの姉たちからのいじめがなくなるわけ?」
「それは……」
「はん! そうやって回りにばっかり原因を求めて、言い訳ばっかしてればいいじゃないこのグズ! あんたみたいなのにはそれがお似合いよ」
「う……酷い、ぐすっ、酷いです……」
私の「正論」でぶっ叩かれたアイリーンが、またうざく泣き始めた。
「はぁ? グズにグズって言って何が悪いのよ? いいわ、せっかくだから今からあんたに、この世の真理ってものを教えてあげるわ」
私は両手を腰に手を当てると、胸を張ってそう言った。