以上が、後の世に『慈愛の聖女マリア』と呼ばれ、大陸中でその名を語られることになるマリア=セレシアの、その若き頃の伝説的エピソードを一部抜粋したものである。

 困窮する村人たちを救うために一夜にして金山を発見してみせた『マリアの一夜金山』。
 数万もの民衆が心美しきマリアのために我先にと馳せ参じた『ウォール・マリア』。

 この特に名高い2つのエピソードをはじめ、時に優しく人を助け、時に厳しく社会の矛盾を糾弾する。
 数々の奇跡を起こし、社会を、人の心までも変革してみせたその尊い行いの数々。

 しかしてただの一度も見返りを求めなかったその清廉潔白なる姿を評するに、『聖女』という他に適切な言葉は見当たらないだろう。

 しかしながら、彼女の為したことはあまりに膨大に過ぎる。

 よってここでは到底語りきることができなかったその他あまたの偉業、奇跡、そして献身は。
 これはまた別の機会に語ることにしよう。

 なにせこの他にもマリアのエピソードときたら星の数ほどありすぎて、本一冊ではとうてい収まりきらないのだから――。


 最後に、ここまで読み終えた諸兄に感謝の気持ちを捧げるとともに。
 諸兄に『慈愛の聖女』マリア=セレシアの聖なる祝福があらんことを切に願い、筆をおきたいと思う。


<記、マリア=セレシア教会、第119代教皇、レグナルト=アイリーン8世>