そして迎えた翌朝。
ザワザワ――ザワザワ――。
私は屋敷の外がなんともうるさいことで目を覚ました。
見上げると、自分の部屋のものではない見慣れない天井がある。
「ふわぁ……そう言えば籠城するための部屋で寝たんだっけ……」
昨夜の間にこの部屋に通じる階段や通路を全部引っぺがして、陸の孤島状態にしたのだ。
でもいつものふかふかのベッドとお気に入りの枕じゃなかったから、肩とか腰が痛いなぁ。
「おはようございますマリア様」
ベッドの上で上体だけ起こしてで「うーん……!」と伸びをする私に、既に身支度を整えてすぐ側に控えていたアイリーンが、丁寧なお辞儀とともに挨拶をしてきた。
ザワザワ――ザワザワ――。
「ああうん、おはよう……。それよりなんだかえらく外が騒がしいみたいなんだけどどうしたの? まだ日の出までは時間があるわよね? まさかもう攻め込んで来たの?」
「それが詳しいことははっきりしないのですが、外の様子がどうにもおかしいのです」
アイリーンは起き抜けの紅茶を音もなく差し出すと、そう答えた。
さすがアイリーン、準備がいいわね。
常に最良で最高のタイミングを見計らっているあなたのそういう病的に注意深いところ、私は好きよ?
「おかしいって?」
ふぅ、起きてすぐの紅茶は目が覚めるわね──、
「どうも周囲を取り囲む人間の数が10倍か、下手をしたら20倍以上に膨らんでいるようなのです」
「ぶふぅぅ――っ!」
私は思わず紅茶を噴き出した。
ほとんど口の中に残ってなかったから良かったぁ……。
でもいや、えっ!?
取り囲む人数が10倍か20倍って、ええぇっ!?
3000人の20倍とすると、つまり6万人いるってこと?
3000人相手でもかなり厳しいって言ってたのに、さすがにその数は無理でしょう!?
セレシア侯爵領からお父さまが救援に駆けつけてくれたとしても、焼け石に水じゃないの……。
うん、終わったね私。
どう考えてもこれは無理だわ。
いくら私が神に愛された生まれながらの勝ち組の超スーパーウルトラセレブでも、6万の大軍に攻められたらさすがに死ぬわ、うん。
はぁ、敵のど真ん中に隕石でも降ってこないかなぁ……。
しかしそこで、窓の隙間から外の様子を真剣な表情で窺っていたセバスチャンが、「おやっ?」という顔をしながら振り向いた。
「どうにも不可解ですな。昨日より取り囲んでいた兵士たちは、新たに来た数万の人間を警戒しているのか大多数はこちらには背を向けております」
「えっと? つまりどういうことよ?」
「まだ断定はできませんが、もしや彼らはマリア様のお味方なのではないでしょうか?」
「私の? もしかしてお父さまが助けに来てくれたのかしら!」
私は最高の可能性を期待したんだけど、
「残念ながらセレシア侯爵領からこの王都まで兵を差し向けるには、どうやっても1日では不可能にございますので、違いますでしょうな」
セバスチャンはやや申し訳なさそうにそれを否定した。
「ああそう……じゃあどこの誰なのよ?」
「可能性としては王都近隣に領地を持つ周辺諸侯でしょうか? しかしそれにしては少々数が多すぎます。そろそろ明るくなってきましたので、所属を示す旗印などがないか今一度確かめてみましょう」
セバスチャンの言うとおり、話している間に次第に辺りが少しずつ明るくなってき始めていた。
「本当に味方だったらいいんだけどなぁ……」
再びセバスチャンが外を覗き見て――そして驚きを隠しきれない口調で言った。
「ま、マリア様! すぐに外をご覧くださいませ! 大変なことになっておりますぞ!」
「今度はなによ? っていうか今より大変な状況ってありえるの……?」
私はため息をつきながらセバスチャンの隣に行って外を覗き見た。
すると――
ザワザワ――ザワザワ――。
私は屋敷の外がなんともうるさいことで目を覚ました。
見上げると、自分の部屋のものではない見慣れない天井がある。
「ふわぁ……そう言えば籠城するための部屋で寝たんだっけ……」
昨夜の間にこの部屋に通じる階段や通路を全部引っぺがして、陸の孤島状態にしたのだ。
でもいつものふかふかのベッドとお気に入りの枕じゃなかったから、肩とか腰が痛いなぁ。
「おはようございますマリア様」
ベッドの上で上体だけ起こしてで「うーん……!」と伸びをする私に、既に身支度を整えてすぐ側に控えていたアイリーンが、丁寧なお辞儀とともに挨拶をしてきた。
ザワザワ――ザワザワ――。
「ああうん、おはよう……。それよりなんだかえらく外が騒がしいみたいなんだけどどうしたの? まだ日の出までは時間があるわよね? まさかもう攻め込んで来たの?」
「それが詳しいことははっきりしないのですが、外の様子がどうにもおかしいのです」
アイリーンは起き抜けの紅茶を音もなく差し出すと、そう答えた。
さすがアイリーン、準備がいいわね。
常に最良で最高のタイミングを見計らっているあなたのそういう病的に注意深いところ、私は好きよ?
「おかしいって?」
ふぅ、起きてすぐの紅茶は目が覚めるわね──、
「どうも周囲を取り囲む人間の数が10倍か、下手をしたら20倍以上に膨らんでいるようなのです」
「ぶふぅぅ――っ!」
私は思わず紅茶を噴き出した。
ほとんど口の中に残ってなかったから良かったぁ……。
でもいや、えっ!?
取り囲む人数が10倍か20倍って、ええぇっ!?
3000人の20倍とすると、つまり6万人いるってこと?
3000人相手でもかなり厳しいって言ってたのに、さすがにその数は無理でしょう!?
セレシア侯爵領からお父さまが救援に駆けつけてくれたとしても、焼け石に水じゃないの……。
うん、終わったね私。
どう考えてもこれは無理だわ。
いくら私が神に愛された生まれながらの勝ち組の超スーパーウルトラセレブでも、6万の大軍に攻められたらさすがに死ぬわ、うん。
はぁ、敵のど真ん中に隕石でも降ってこないかなぁ……。
しかしそこで、窓の隙間から外の様子を真剣な表情で窺っていたセバスチャンが、「おやっ?」という顔をしながら振り向いた。
「どうにも不可解ですな。昨日より取り囲んでいた兵士たちは、新たに来た数万の人間を警戒しているのか大多数はこちらには背を向けております」
「えっと? つまりどういうことよ?」
「まだ断定はできませんが、もしや彼らはマリア様のお味方なのではないでしょうか?」
「私の? もしかしてお父さまが助けに来てくれたのかしら!」
私は最高の可能性を期待したんだけど、
「残念ながらセレシア侯爵領からこの王都まで兵を差し向けるには、どうやっても1日では不可能にございますので、違いますでしょうな」
セバスチャンはやや申し訳なさそうにそれを否定した。
「ああそう……じゃあどこの誰なのよ?」
「可能性としては王都近隣に領地を持つ周辺諸侯でしょうか? しかしそれにしては少々数が多すぎます。そろそろ明るくなってきましたので、所属を示す旗印などがないか今一度確かめてみましょう」
セバスチャンの言うとおり、話している間に次第に辺りが少しずつ明るくなってき始めていた。
「本当に味方だったらいいんだけどなぁ……」
再びセバスチャンが外を覗き見て――そして驚きを隠しきれない口調で言った。
「ま、マリア様! すぐに外をご覧くださいませ! 大変なことになっておりますぞ!」
「今度はなによ? っていうか今より大変な状況ってありえるの……?」
私はため息をつきながらセバスチャンの隣に行って外を覗き見た。
すると――