「うん、美味しいわね♪」

 私は満足しながら立て続けにチョコレートを口にする。

 だって私は休日の夕食の後の時間はいつも、優雅にティータイムをするって決めているんだもん。
 私はスーパーセレブだから、自分の生き方を簡単に曲げたりはしないの。

 今はたしかにピンチかもだけど、それはそれ、これはこれ。
 この瞬間に優先すべきは優雅なティータイムなのよ。

 紅茶を飲んだことで少し気分も落ち着いた私は、そう言えばどうしても聞いておかなければいけないことがあったのを思い出していた。
 なので早速尋ねてみる。

「なんとかならないの? 明日は新作のドレスが届く予定なんだけど」

 期限が明日の日の出の刻ってことは、新作のドレスが届く前ってことでしょ?
 ってことはせっかく新作の着物ドレスが届く予定なのに、これじゃあ受け取れないじゃん!

 専属契約がなくなってからも律義に私に新作を作り続けてくれるあの勤勉な着物職人が、今回のは今までで一番の自信作だって言ってたから、それはもう楽しみにしてたんだよ?

「ま、マリア様……」

 そんな私の言葉を聞いて、集まっていたみんながポカーンとした顔を向けてきた。

「ちょ、ちょっと。みんなしてなによその顔……」

 新作のドレスが届く日を、私は本当に楽しみにしていたのよ?
 なのに明日もし攻められたら新作のドレスが着れないじゃない。
 そんなのありえないでしょ!

 しばらくなんとも微妙な間があった後。

「やれやれまったく。マリア様には本当に敵いませんな」
 セバスチャンが苦笑しながら言った。

「ですね♪」
 さらにアイリーンもやけに嬉しそうな顔をして笑う。

 それを引き金に、他の使用人や私兵たちも声を出して笑い始めた。

 な、なに?
 みんな今の状況がピンチ過ぎて、もう笑うしかできなくなっちゃったの?

「ふぅ。この私としたことが、戦う前から諦めてしまっていたとは、老いとは実に怖いものですな。知らぬ内に弱気の虫が、我が心に白アリのごとく巣くっていたようです」

「そう? セバスチャンは十分若々しいと思うけど?」

「ははっ、お褒めいただきありがとうございます。マリア様のジョークのおかげで気が楽になるとともに、このセバスチャン、久方ぶりに心の中に獅子のごとき猛々しい闘志が燃え上がってくるのを感じておりますぞ」

「あらそう? 元近衛騎士団長のあなたがそう言うのなら心強いわね」

 ジョークって言うのがよく分からないけど、そんなにやる気になってくれたのなら私としても嬉しいわ。

「ではマリア様が新作のドレスを着ることができるように、我ら一同でなんとかこの窮地を脱する策を考えようではないか!」

 セバスチャンが右手の拳を突き上げると、

「「「「「「マリア様のために!」」」」」」
 ここにいる皆が応えるように右手を突き上げた。

 どうやら我が方の士気は高いみたいね。
 さすがはセレシア家に選ばれた使用人と兵士たちだわ。

 私は何もできないから、みんな頑張ってよね!
 私のために!