しかも私が雇ったこのヤパルナの着物職人は非常に忠義にあつく、驚くほどに勤勉だった。
月100万というはした金で類まれなる才能を買い叩かれているとも知らず、毎日朝早くから夜遅くまで働いては、
「マリア様のおかげで裕福になっただけでナク、毎日がとても充実していマス」
とかなんとか嬉しそうに言いながら、着物だけでなくカンザシというヤパルナの髪留めや、キンチャクやセンスといった雑貨まで作って献上してくれるのだ。
「むふふ、これはもの凄い掘り出し物だったわね……」
そして着物の中でも特に派手でゴージャスな振袖というのを作ってもらった私は、早速パーリーに着て行ったんだけど。
私はパーリーの他の参加者から星の数ほどの称賛と、休む間もないほどの質問攻めにあっていた。
「ま、マリア様! このとても素敵なドレスは、いったいどこで手に入れたのでしょうか?」
「私も着てみたいですわ!」
「こんなの見たことありませんもの!」
「なんというドレスなのですか!?」
「どこに行けば買えるのでしょうか?」
「マリア様!」
「マリア様!!」
くはー!
たまらないわ!
「えっと、これはうちのお抱え専属デザイナーの新作ですのよ。なんでも東の果てにあるヤパルナという国の、着物という民族衣装なんですって。だから他所では売ってはいないんじゃないでしょうか?」
「そうなんですか……」
「残念です」
「さすがは名門セレシア侯爵家の専属デザイナーですわね」
「ヤパルナの民族衣装にまで精通しているだなんて」
「羨ましい限りですわ」
「ではもし皆さんがよろしければですけど、今度私の家で着物の試着会などしてみませんか?」
「よろしいのですか?」
「私、ぜひ参加したいです!」
「私もです!」
「私もぜひ!」
「マリア様、わたくしもぜひ!」
「ふふっ、みなさん、少し興奮し過ぎですわ。今着ているものの他にも着物はたくさんありますので、今度皆さんが着物を着る機会をご用意させていただきますわね。その時にはヤパルナ風のお茶会というものも、ご用意いたしますから」
私は満面の笑みでそう答えた。
あふぅ。
取り巻きもライバルも、みんながみんな。
私と私の着物を羨ましそうに見ているの!
普段はライバル視しあっていて、まったく会話をしない1つ上の公爵令嬢のグループまで、着物を着せてほしくてみんなして私に頭を下げてくるんだもの!
間違いなく、今日の私はぶっちぎりのナンバーワンだわ。
令嬢カーストの頂点にいるわ。
しかも着物は独特の作りをしている上に、着るための手順も普通のドレスとは全然違っている。
さらに私が専属デザイナーにしたあの職人しか作れないから、おいそれと真似をすることもできはしない。
つまり称賛を浴びることができるのは未来永劫、着物の技術を独占しているこの私ただ一人っていうわけ!!
くふふふふっ!
今日のパーリーは最っ高に気持ちがいいわね!
さぁさぁ、もっと私を崇め奉りなさい!
この時の私はまさに幸福の絶頂にいた。
――だがしかし。
私が独占したはずの着物の技術は流出してしまった。
いや流出させられてしまった。
というのも、それから少ししてからお父さまにこう言われてしまったのだ。
「マリア、着物という珍しいドレスを作る職人を雇ったそうだね」
と。
月100万というはした金で類まれなる才能を買い叩かれているとも知らず、毎日朝早くから夜遅くまで働いては、
「マリア様のおかげで裕福になっただけでナク、毎日がとても充実していマス」
とかなんとか嬉しそうに言いながら、着物だけでなくカンザシというヤパルナの髪留めや、キンチャクやセンスといった雑貨まで作って献上してくれるのだ。
「むふふ、これはもの凄い掘り出し物だったわね……」
そして着物の中でも特に派手でゴージャスな振袖というのを作ってもらった私は、早速パーリーに着て行ったんだけど。
私はパーリーの他の参加者から星の数ほどの称賛と、休む間もないほどの質問攻めにあっていた。
「ま、マリア様! このとても素敵なドレスは、いったいどこで手に入れたのでしょうか?」
「私も着てみたいですわ!」
「こんなの見たことありませんもの!」
「なんというドレスなのですか!?」
「どこに行けば買えるのでしょうか?」
「マリア様!」
「マリア様!!」
くはー!
たまらないわ!
「えっと、これはうちのお抱え専属デザイナーの新作ですのよ。なんでも東の果てにあるヤパルナという国の、着物という民族衣装なんですって。だから他所では売ってはいないんじゃないでしょうか?」
「そうなんですか……」
「残念です」
「さすがは名門セレシア侯爵家の専属デザイナーですわね」
「ヤパルナの民族衣装にまで精通しているだなんて」
「羨ましい限りですわ」
「ではもし皆さんがよろしければですけど、今度私の家で着物の試着会などしてみませんか?」
「よろしいのですか?」
「私、ぜひ参加したいです!」
「私もです!」
「私もぜひ!」
「マリア様、わたくしもぜひ!」
「ふふっ、みなさん、少し興奮し過ぎですわ。今着ているものの他にも着物はたくさんありますので、今度皆さんが着物を着る機会をご用意させていただきますわね。その時にはヤパルナ風のお茶会というものも、ご用意いたしますから」
私は満面の笑みでそう答えた。
あふぅ。
取り巻きもライバルも、みんながみんな。
私と私の着物を羨ましそうに見ているの!
普段はライバル視しあっていて、まったく会話をしない1つ上の公爵令嬢のグループまで、着物を着せてほしくてみんなして私に頭を下げてくるんだもの!
間違いなく、今日の私はぶっちぎりのナンバーワンだわ。
令嬢カーストの頂点にいるわ。
しかも着物は独特の作りをしている上に、着るための手順も普通のドレスとは全然違っている。
さらに私が専属デザイナーにしたあの職人しか作れないから、おいそれと真似をすることもできはしない。
つまり称賛を浴びることができるのは未来永劫、着物の技術を独占しているこの私ただ一人っていうわけ!!
くふふふふっ!
今日のパーリーは最っ高に気持ちがいいわね!
さぁさぁ、もっと私を崇め奉りなさい!
この時の私はまさに幸福の絶頂にいた。
――だがしかし。
私が独占したはずの着物の技術は流出してしまった。
いや流出させられてしまった。
というのも、それから少ししてからお父さまにこう言われてしまったのだ。
「マリア、着物という珍しいドレスを作る職人を雇ったそうだね」
と。