「圧倒的じゃないの、我が軍は……! ブラボー! 後でお父さまに言って全員に金一封をつけてもらうからね!」
恐ろしいまでの手際の良さに、私は素直に称賛を送った。
「今回の護衛チームは、王国騎士団から引き抜いたエース級で固めたスペシャルチームにございます。これくらいはお手の物にございますれば」
自らも剣を持って野盗殲滅の先頭に立って戦ったセバスチャンが、涼しい顔で言う。
そういえばセバスチャンって、若い頃は王宮近衛騎士団で団長をしてたんだっけ。
普段は物腰柔らかですごく優しいから、すっかりその設定を忘れてたわ。
――と、
「この度は私どもを助けていただき本当にありがとうございました。馬車も走れるように応急修理をしていただいて本当に感謝しております」
お礼を言いに若い男女がやってきた。
ああ、つまり旅の途中で野盗に襲われて、それを形の上では私が助けたことになったってわけね。
「別にあなたたちの感謝なんていりませんわ」
だから私は率直に言ってあげた。
だってこんな庶民に感謝されたところで、私の人生になんの意味があるの?
私、意味のないことって好きじゃないのよね。
私の貴重な時間を無駄にするだけだもの。
「私は、私の通行の邪魔になったゴミクズをまとめて処分しただけですから。別に感謝とかそういうのは全然必要ありませんから」
「ですが――」
「ではそう言うことですので、ごきげんよう。さぁセバスチャン、早く馬車を進ませなさい。日が暮れる前に目的に着くんだからね」
「さすがはマリア様。お優しい心遣いにこのセバスチャン、心より感激いたしましたぞ」
セバスチャンが何やら小声でそっと目元をぬぐっていた。
どうしたんだろう?
目にゴミでも入ったのかな?
でも早く御者に戻ってね。
なにせ私は早く目的地に到着して、たっぷりお湯を張って薔薇の花を浮かべたお風呂に入りたいんだから。
「このお礼は必ず返します。わが家名にかけて……もう捨ててしまった家名だけれど」
別れ際に男のほうがなんか言っていたけど、ごめんなさい。
私、庶民のお礼よりはやく薔薇のお風呂に入ることの方が大事なの(笑)
~~後日。
やっとこさ本国へと帰国した私が、休日の昼下がりに優雅にティータイムをたしなんでいると、
「ま、マリア様に、シュヴァインシュタイガー帝国の七選帝侯のトラヴィス公爵家より、内々に使者が参っております……!」
いつもは冷静沈着な老執事のセバスチャンが血相を変えてやってきた。
「? えっとたしか七選帝侯って、シュヴァインシュタイガー帝国の皇帝を輩出する7つの大貴族……だったっけ?」
なんか大陸の歴史の授業で習った気がする――ようなしないような?
私は成績はかなりいい方なんだけど、さすがに他国の政治体制の細かいところまではしっかりとは覚えていないのよね。
っていうかなんで私なのよ?
「お父様じゃなくて私に? 理由はなにかしら?」
思い当たる節がまったくなさ過ぎて、私は首を傾げざるをえなかった。
「駆け落ちしたご子息の命を、マリア様に救っていただいたとのことです。詳しい話はわたくしにも聞かせられないとのことでした。とにかく相手は覇権国家シュヴァインシュタイガー帝国の皇帝を輩出する超名門の大貴族です。すぐに正装をしてお会い頂きたく存じます」
「ま、まぁ今日は暇だしそれはいいんだけど……」
私はさっぱり腑に落ちないまま着付け担当のメイドたちを呼ぶと、急いで美しく着飾って正装をした。
それにしても駆け落ち?
私が助けた?
ほんとにいったい何の話なのよ?
これで実は人違いだったとかやめてよね?
ねぇねぇそこのあなた。
ちょうどいいわ。
参考程度にちょっとあなたの意見を聞かせてくれないかしら?
恐ろしいまでの手際の良さに、私は素直に称賛を送った。
「今回の護衛チームは、王国騎士団から引き抜いたエース級で固めたスペシャルチームにございます。これくらいはお手の物にございますれば」
自らも剣を持って野盗殲滅の先頭に立って戦ったセバスチャンが、涼しい顔で言う。
そういえばセバスチャンって、若い頃は王宮近衛騎士団で団長をしてたんだっけ。
普段は物腰柔らかですごく優しいから、すっかりその設定を忘れてたわ。
――と、
「この度は私どもを助けていただき本当にありがとうございました。馬車も走れるように応急修理をしていただいて本当に感謝しております」
お礼を言いに若い男女がやってきた。
ああ、つまり旅の途中で野盗に襲われて、それを形の上では私が助けたことになったってわけね。
「別にあなたたちの感謝なんていりませんわ」
だから私は率直に言ってあげた。
だってこんな庶民に感謝されたところで、私の人生になんの意味があるの?
私、意味のないことって好きじゃないのよね。
私の貴重な時間を無駄にするだけだもの。
「私は、私の通行の邪魔になったゴミクズをまとめて処分しただけですから。別に感謝とかそういうのは全然必要ありませんから」
「ですが――」
「ではそう言うことですので、ごきげんよう。さぁセバスチャン、早く馬車を進ませなさい。日が暮れる前に目的に着くんだからね」
「さすがはマリア様。お優しい心遣いにこのセバスチャン、心より感激いたしましたぞ」
セバスチャンが何やら小声でそっと目元をぬぐっていた。
どうしたんだろう?
目にゴミでも入ったのかな?
でも早く御者に戻ってね。
なにせ私は早く目的地に到着して、たっぷりお湯を張って薔薇の花を浮かべたお風呂に入りたいんだから。
「このお礼は必ず返します。わが家名にかけて……もう捨ててしまった家名だけれど」
別れ際に男のほうがなんか言っていたけど、ごめんなさい。
私、庶民のお礼よりはやく薔薇のお風呂に入ることの方が大事なの(笑)
~~後日。
やっとこさ本国へと帰国した私が、休日の昼下がりに優雅にティータイムをたしなんでいると、
「ま、マリア様に、シュヴァインシュタイガー帝国の七選帝侯のトラヴィス公爵家より、内々に使者が参っております……!」
いつもは冷静沈着な老執事のセバスチャンが血相を変えてやってきた。
「? えっとたしか七選帝侯って、シュヴァインシュタイガー帝国の皇帝を輩出する7つの大貴族……だったっけ?」
なんか大陸の歴史の授業で習った気がする――ようなしないような?
私は成績はかなりいい方なんだけど、さすがに他国の政治体制の細かいところまではしっかりとは覚えていないのよね。
っていうかなんで私なのよ?
「お父様じゃなくて私に? 理由はなにかしら?」
思い当たる節がまったくなさ過ぎて、私は首を傾げざるをえなかった。
「駆け落ちしたご子息の命を、マリア様に救っていただいたとのことです。詳しい話はわたくしにも聞かせられないとのことでした。とにかく相手は覇権国家シュヴァインシュタイガー帝国の皇帝を輩出する超名門の大貴族です。すぐに正装をしてお会い頂きたく存じます」
「ま、まぁ今日は暇だしそれはいいんだけど……」
私はさっぱり腑に落ちないまま着付け担当のメイドたちを呼ぶと、急いで美しく着飾って正装をした。
それにしても駆け落ち?
私が助けた?
ほんとにいったい何の話なのよ?
これで実は人違いだったとかやめてよね?
ねぇねぇそこのあなた。
ちょうどいいわ。
参考程度にちょっとあなたの意見を聞かせてくれないかしら?