くっくっく……!
 くーっくっくっく……!

 あーはっはっはっはっは!!!!

 いやー、この日私は思わず出てしまいそうになる笑いを堪えるのに必死だったよ。

 というのも。
 定期考査でなんと全教科満点のグランドスラムでぶっちぎってやったからだ。


「信じられません! すごいですわ!」
「さすがマリア様ですわね!」
「マリア様と同じ学び舎にいられて毎日が幸せですの!」

 私を中心に、ミナトたちがわー!っと輪になって盛り上がっている。

 まっ、当然よね。
 なんせこの日のために、死ぬ気でテスト勉強をしたんだから。

 それもこれも――、

「でも、それではアーニャさんの特待生留学は……デザイナーになりたいって言っておられましたのに……」

「特待生留学は全教科総合5位以内、加えてどれかひとつの科目で1位をとることですわ……でもマリア様が全教科1位ですから必然的に……」

「なんでもアーニャさんは今回留学ができなければ、学園をやめて実家の靴屋をお継ぎになるのだとか……」

「え~、そうだったんですかぁ!? アーニャ、ごめんなさぁい。私ってば何も知らなくてぇ。そうと知っていればぁ~~」

 私はさも今、そのことを知ったかのように迫真の演技をしながら言った。

「いいえ、マリア様はちっとも悪くありませんので! 私、このことはほとんど誰にも言っていませんでしたから。マリア様が知らなくても当然ですから」

 特待生留学の夢が破れたというのに、それでも笑顔を作って気丈に振る舞うアーニャに、

「アーニャ……」
 私はかける言葉が見つからなかったわ……。

 ……なーんてね!
 なーんてねっ!!

 ざーんねんっ!
 そんなのとっくに知ってたもんねー!(笑)
 職員室で先生とアーニャが話しているのを、偶然通りかかって聞いちゃったんだもんねー!

 前のミーシャの時は解答欄がずれる大ポカをしちゃったけど、今回は絶対ミスなくすマンで完璧にやり遂げたもんねー!

 そもそもよ!

 しがない田舎町の靴屋の娘の分際で、なんでか高貴なうちの学園に入学してきたかと思えば、学園一の美少女だとかなんとかちやほやされていい気になって。

 なにが「夢はシュヴァインシュタイガー帝国の帝都に行って、トップデザイナーになることなんです」よ!
 大陸一の覇権国家シュヴァインシュタイガー帝国の帝都でトップデザイナーになりたいとか、愚かな夢見る前にまず自分の身の程を知りなさいな!!

 しかもパーリーではこれっでもかってくらいに男を従えて、お姫様みたいに振る舞って……!

 それだけでなく可愛い子ぶりっこして、貧乏なだけのくせに質素ではかなげなヒロインを演出して、取り巻きの男どもからいっぱい贈り物を貢いでもらって!

 私には全部わかってんのよ!
 あんたが狙ってそういう態度をとってるってことがね!

 だってもし私が同じ立場だったら、絶対にそういうやり方で可哀そうな女の子アピールするもん。

 そんなあんたにはね。
 きらびやかな上流階級よりも、分相応の小汚い街の靴屋で平凡な一生を終えるのがお似合いなのよ!

 あははははっ!
 貧乏庶民のくせに調子にのった罰よ、ざまーみろ!(笑)


「アーニャ。手先の器用なあなたなら、きっと素晴らしい靴職人になれると思うわ。その時にはぜひ、私の靴を作ってちょうだいね?」

 ……だめ、だめよマリア。
 まだ笑っちゃいけないわ。

 堪えるのよマリア!
 後からいくらでも思い出し笑いは出来るんだから。

 だから今は心の中だけで笑うにとどめておきましょう!