最低の最悪だったパーリーの帰り。
 私はサイズをミスりやがったグズ職人のいる仕立屋へと怒鳴り込んだ。

「あんたね! 昔は王家御用達の有名なマエストロだったかなんだか知らないけど、いい加減作風は古いしこんなありえないミスはするし! 腕が落ちたんなら引退するのが当たり前でしょ! セレシア家は貴族の名門なのよ! 服を作るしか能がないくせに、その服すら満足させるものが作れないとか、あんた生きてる価値あるの!? いっぺん死ぬか、それとももう一度――いいえもう一万回、名門セレシア家お抱えの仕立屋をやっている意味を考えてみることね!」

 はぁはぁはぁ……。

 私は大事なパーリーに新作ドレスを着ていけなかった怒りを、老マエストロにそれはもう激しくぶつけにぶつけた。

 相手が老人だから優しくしろ?

 はぁ!?
 馬鹿言ってんじゃないわよ!
 だってみんなもわかってくれるでしょ、私の気持ち。

 みんなに新作ドレスで行くって散々自慢してたのに、古いドレスでパーリーに参加しないといけなかった私の惨めさときたら……!

 ムカつくライバルたちが、さも気を使ってる顔をして私を心配しにきやがるんだもん!
 この悔しさときたら、こいつを百億万回社会的に抹殺しても足りないくらいだわ!

 絶対に許さないんだから!
 絶対にだ!!

 その後、私は2時間にわたって老マエストロを怒鳴り倒したのだった。
 ついでにこれ幸いと、日頃のうっぷんもまとめてぶちまけてやった。

 だって悪いのはこいつなんだし?
 それくらい当然の権利だよね?(笑)

 ま、おかげでちょっとはすっきりしたわ。


 ~~後日。

「これはまた素敵なドレスね! センスも今風、ううんすっごく先をいってる感じ! いいじゃないの、マーベラスだわ! 私これとっても好き! なによ、あのグズな老マエストロもやればできるんじゃない」

 私は素晴らしい出来栄えの新作ドレスを広げて眺めながら、うっとりとしていた。

「それが、老マエストロは引退したそうですよ。これは後を継いだ息子が作ったとのことです」

 そんな私に、専属メイドのアイリーンが職人が代替わりしたことを教えてくれる。

「あらそうなのね」

 ま、無能が去るのはいいことよね。
 出来さえ良ければ、別に誰が作ろうと興味ないし。

「老マエストロより手紙も預かっております」
「ふーん、そう」

 特に興味ないかな。

「……ではお読みしますね」

 私が手紙にまったく興味を示さなかったからだろう。
 アイリーンが代わりに手紙を読んでくれると言ってきた。

「ああうん、はいはい」

 はふぅ。
 ほんとこれはいいドレスね。
 見ているだけで心から幸せになれるわ。

 それにこれならどこの誰にだって負けないもの!
 
 新作ドレスに感動しきりの私をよそに、アイリーンが手紙を読みあげ始める。

「過去の名声もあってか、既に才能が枯れ果てていた自分に誰も意見することができず裸の王様となっていたところ。マリア様に叱責されたおかげで自ら引く決心がつきました」

 えっと、次のパーリーはいつだったかしら?
 せっかくお披露目するなら大きなパーリーじゃないと意味ないわよね。

 たしか王太子主催の超ハイレベルパーリーが1カ月後くらいにあったっけ?
 よし、その時に来て行こうっと♪

「私もやっと肩の荷を下ろすことができました。この後は後進にアドバイスを送りつつ、ゆっくりと余生を過ごしたいと考えております。こたびの一件、マリア様には本当に感謝してもしきれません、とのことです」

「ああそう。はいはいよかったわね」

 もちろん私はまったく聞いちゃいなかった。
 だってもう私の意識はただただ、この魅力的なドレスに全力釘づけだったんだもん!

「手紙なんてどうでもいいから、すぐにこのドレスを試着しましょう! 私もう待ちきれないわ。ほら何してるのアイリーン、早く着付け担当のメイドを呼びなさいな!」

 ああもう、次のパーリーがほんとに楽しみ!
 この素敵なドレスを、みんなにこれでもかって見せびらかしてあげるんだから!