「ねぇアイリーン。明日のパーリーに来ていく新作ドレスはもう届いたのかしら?」
この前お父さまの盆栽をちょっとアレしてしまった時に、でも結果的に増額してもらったお小遣い。
私はそれでさっそく新作ドレスをオーダーメイドしたんだけど。
それがさっき届いたっぽいんだよねー。
セレシア家御用達の有名仕立屋の馬車がやって来るのが、ついさっき窓から見えたから。
ドレスが届いたのかどうかを確認に行かせた専属メイドのアイリーンに、私はウッキウキのハッピハピで尋ねたんだけど、
「お嬢さま、そのことなのですが実は――」
なぜかアイリーンは申し訳なさそうな顔をすると、なにやら事の次第を説明し始めた。
頭のいいアイリーンらしく要点良くまとめられた説明だったんだけど。
それを聞いた途端に、私の怒りは頂点に達した!
なぜなら――!
「はぁっ!? サイズが合わないと思うですって? 寝言を言ってるんじゃないわよ。誰もあんたの見立てなんて聞いてないの。ぐだぐだ言ってないでさっさと出来上がったドレスを見せなさい! 早く! 今すぐ! 走れ!!」
すぐさま取って返したアイリーンが持ってきたドレスを、私は急いで確認した。
すると――!
「ちょ、冗談でしょ!? こんなにきっつきつじゃ着ていけないじゃないの!? 特に胸の辺りが!!」
ドレスは見てパッと分かるほどに胸のサイズが小さかったのだ――!
その事実を目の当たりにして私は愕然とする。
怒りのあまりドレスを持った手がわなわなと震えていた。
名門貴族であるセレシア侯爵家の令嬢であり、神に愛されたスーパーセレブだから当然なんだけど、私は胸がそれなりに大きくて形もとてもいい。
メガビッグってほどじゃないけど、どこに出しても恥ずかしくない自慢の胸を持っている。
なのにこんなペタンコサイズにドレスが仕立てられてたら、入るわけがないでしょ!?
形だって崩れちゃうじゃない!
それはもう美しすぎる私の胸に、変な形の癖でも付いたらどうしてくれるのよ!!
「でしたら前に買われた青いドレスを着ていかれてはいかがでしょうか? 大変お綺麗でお似合いでしたよ」
「そんなのダメに決まってるでしょ!」
「なぜでしょうか?」
「だって今回は1千万かけた新作の特注ドレスで参加するって、みんなに自慢しちゃったんだもん!」
それはもう何度も何度もみんなに言って回ったのだ。
「あ、はい……そうだったのですね……」
「だからどれだけ似合ってても、今さら前のなんて着てなんていけないのよ!」
「ですが今から仕立て直していては、とても明日のパーティには間に合いませんよ? 大きいサイズを小さくするならまだしも、小さいのを大きくするには生地自体を取り替えないといけませんし」
「だってそんな……前のドレスを着ていったら私、完全にみんなの笑いものにされるじゃん。なにそれありえないんだけど……」
「では急な体調不良ということで、パーティはご欠席なされますか?」
「それはできないわ。今回のパーリーのホストはミナトなのよ? ミナトに絶対に来てねって言われてるんだもん、出ないわけにいかないでしょ」
ミナトは私の唯一と言っていい、心から信頼できる親友だ。
招待客の中で一番家格の高いセレシア侯爵家の私が行かなければ、ホストのミナトは赤っ恥をかいてしまう。
もし私がミナトの立場だったら一生恨む。
絶対に許さないし、死ぬまで恨み続けるだろう。
そういうわけだったので。
新作ドレスを着ていくことができなかった私は、仕方なく前のパーリーでも着ていった青いドレスで、ミナトのパーリーに参加した。
……パーリーは最っ低の最っ悪だった。
(後編に続く)
この前お父さまの盆栽をちょっとアレしてしまった時に、でも結果的に増額してもらったお小遣い。
私はそれでさっそく新作ドレスをオーダーメイドしたんだけど。
それがさっき届いたっぽいんだよねー。
セレシア家御用達の有名仕立屋の馬車がやって来るのが、ついさっき窓から見えたから。
ドレスが届いたのかどうかを確認に行かせた専属メイドのアイリーンに、私はウッキウキのハッピハピで尋ねたんだけど、
「お嬢さま、そのことなのですが実は――」
なぜかアイリーンは申し訳なさそうな顔をすると、なにやら事の次第を説明し始めた。
頭のいいアイリーンらしく要点良くまとめられた説明だったんだけど。
それを聞いた途端に、私の怒りは頂点に達した!
なぜなら――!
「はぁっ!? サイズが合わないと思うですって? 寝言を言ってるんじゃないわよ。誰もあんたの見立てなんて聞いてないの。ぐだぐだ言ってないでさっさと出来上がったドレスを見せなさい! 早く! 今すぐ! 走れ!!」
すぐさま取って返したアイリーンが持ってきたドレスを、私は急いで確認した。
すると――!
「ちょ、冗談でしょ!? こんなにきっつきつじゃ着ていけないじゃないの!? 特に胸の辺りが!!」
ドレスは見てパッと分かるほどに胸のサイズが小さかったのだ――!
その事実を目の当たりにして私は愕然とする。
怒りのあまりドレスを持った手がわなわなと震えていた。
名門貴族であるセレシア侯爵家の令嬢であり、神に愛されたスーパーセレブだから当然なんだけど、私は胸がそれなりに大きくて形もとてもいい。
メガビッグってほどじゃないけど、どこに出しても恥ずかしくない自慢の胸を持っている。
なのにこんなペタンコサイズにドレスが仕立てられてたら、入るわけがないでしょ!?
形だって崩れちゃうじゃない!
それはもう美しすぎる私の胸に、変な形の癖でも付いたらどうしてくれるのよ!!
「でしたら前に買われた青いドレスを着ていかれてはいかがでしょうか? 大変お綺麗でお似合いでしたよ」
「そんなのダメに決まってるでしょ!」
「なぜでしょうか?」
「だって今回は1千万かけた新作の特注ドレスで参加するって、みんなに自慢しちゃったんだもん!」
それはもう何度も何度もみんなに言って回ったのだ。
「あ、はい……そうだったのですね……」
「だからどれだけ似合ってても、今さら前のなんて着てなんていけないのよ!」
「ですが今から仕立て直していては、とても明日のパーティには間に合いませんよ? 大きいサイズを小さくするならまだしも、小さいのを大きくするには生地自体を取り替えないといけませんし」
「だってそんな……前のドレスを着ていったら私、完全にみんなの笑いものにされるじゃん。なにそれありえないんだけど……」
「では急な体調不良ということで、パーティはご欠席なされますか?」
「それはできないわ。今回のパーリーのホストはミナトなのよ? ミナトに絶対に来てねって言われてるんだもん、出ないわけにいかないでしょ」
ミナトは私の唯一と言っていい、心から信頼できる親友だ。
招待客の中で一番家格の高いセレシア侯爵家の私が行かなければ、ホストのミナトは赤っ恥をかいてしまう。
もし私がミナトの立場だったら一生恨む。
絶対に許さないし、死ぬまで恨み続けるだろう。
そういうわけだったので。
新作ドレスを着ていくことができなかった私は、仕方なく前のパーリーでも着ていった青いドレスで、ミナトのパーリーに参加した。
……パーリーは最っ低の最っ悪だった。
(後編に続く)