そんな仔猫との高貴な遊びをたしなんで、満足して馬車待合室に戻ろうとした私だったんだけど、

「マリア様?」
「ビクゥッ!!??」

 少し離れたところから突然声をかけられて、私は思わず飛び上がりそうになってしまった。
 声をかけてきたのはクラスメイトで友人のミナトだった。

 やっば!?
 マジぜんぜん気付いてなかったんだけど!?
 ……いろいろ見られてなかったかな?

 私は内心焦りまくりだった。

 と言うのも。
 ミナトはお父さまの親友の娘で、私も含めて幼いころから家族ぐるみでお付き合いしていることもあって、私が数少なく心から信じられるお友達だったからだ。

 私の唯一の親友と言ってもいいだろう。

「こんな雨の中だというのに外にマリア様のお姿がお見えになったので、いったいどうされたのかと思ってきてみたのですが――」

 ほっ。
 よかった、気付かれてない。
 とりあえず胸をなでおろす私。

「って、あ……」

 ミナトが木箱と、その中でこっちを見つめている仔猫の存在に気が付いた。

「いやあのねミナト。うちはお父さまが最近猫アレルギーになったから、猫を飼いたくても飼えないの……」

 私はとても殊勝な顔をしながら、心にもないことを言う。

 もちろんお父さまは猫アレルギーなんかではない。
 むしろ犬も猫も馬も、たいがいの動物は大好きなタイプだ。

「ああ! それで何度も立ち止まっては振り返っておられたのですね。飼えないけれど、捨て置くのは可哀そうだと、そう思われたのですわね」

「え、ええ、まぁ……」

「さすがマリア様ですわ。なんとお優しいお心をされているのでしょうか」
「う、うん……」

「分かりました、この仔猫は私が責任をもってどうにかしてみせますから、安心してくださいな」

「そ、そう? じゃあ頼むわね?」


 ~~後日。

「そう言えばミナトさん、聞きましたわよ。イケメンアイドル騎士のカミトといい仲なんですって?」
「なんでも先日学園で拾った捨て猫の里親探しを通じて知り合ったとか」

「カミトは猫好きで有名ですものね!」
「いーなー! うらやましーな!」

 始業前の教室で、クラスメイト達がそんな会話で盛り上がっていた。
 私も大好きな超イケメンアイドル騎士のカミトの話題だったんだけど、

 学園で拾った捨て猫……?
 学園で拾った猫、猫、猫……って、まさか――、

「ちょ、ちょっと、ミナト!? それってあの時の三毛猫の仔猫だったりする!?」

「え、ええマリア様。あの時の仔猫ですけど、そんなに慌ててどうされたんですか?」

 ってことは――、

 うわー! くそー!
 もし私があの仔猫を拾って「どーぶつあいごだんたい」とかいうのに持って行ったら、私がイケメンアイドル騎士のカミトとお付き合いできたってことじゃん!?

 なにそれハァ!?
 マジで!?
 そんなのちゃんと教えてくれないと困るじゃん!?

 いやほんと、そんなぁ!(泣)