「マリア様、コーデリアとのことで相談に乗ってはいただけないでしょうか?」

 とある盛大なパーリーの日。
 私は参加者の一人からそんな風に声を掛けられていた。

「私にですか?」
「はい、マリア様はコーデリアの一番の親友だと伺いましたので」

 相手は……えーと、どこの誰だっけ?
 自己紹介された記憶が薄っすらとなくはない……かも?

 たしかその辺に掃いて捨てるほどいる貧乏貴族の息子だったかな?
 とか思う的な?

 いや、実はどうだったかなぁ? 
 うーん、まったく興味がないから覚えてないや。

 だってさ?

 なんか冴えない顏だし?
 ひょろモヤシだし?
 性格は男らしさのかけらもないし?

 なんていうの?
 男としての魅力がゼロでしょこいつ?
 こんなやつの名前とか覚えてもしょうがないよね(笑)

「ええ、コーデリアさんはとてもよいお友達ですよ。彼女は勉強もできて、運動もできて、家柄も良くて。本当に素敵な憧れの女性なんです」

 まぁそんな冴えない男の話を、この名門セレシア侯爵家の娘である私がわざわざ聞いてあげたのには、わけがあるのだよ。

 素敵すぎて素敵すぎてほんとムカつく女、それがコーデリア=クラウスという女だった。

 テストの点は私より下なのに、課外活動とかいって放課後の奉仕活動で教師におべっかを使ってポイントを稼いで最終的に私の上に来る。
 そういうことを平然とやってのける、それはもうクソみたいな性格をしたクソ女なのだ。

 せっかくだからもうちょっと説明してあげると、まずこの女はかなりの美人だ。
 それも可愛い系の美人ときた。
 マジでムカつく。

 そして普段はおしとやかなのに、運動はなにをやらせても天才的。
 私だってそれなり以上にできるのに、この女がいるせいでいつも影が薄いんだよね。

 だけど何よりムカつくのがその家柄の良さだった。
 コーデリアのクラウス侯爵家は、私のセレシア侯爵家よりちょっとだけ格が上なのだ。

 ちょっとだけだよ?
 ほんとちょっとだけ。

 その違いは何かと言うとクラウス侯爵家は、王家の血が他の貴族よりも少し濃く混じっているのだ。

 もちろん私のセレシア侯爵家だって名門だから、王家の血は混じってるんだけど。
 クラウス侯爵家は過去に何人もの王女を迎え入れた、王族に近しい家系として有名だった。

 ただまぁそうは言ってもどちらも同じ侯爵家なわけで?
 だから2つの家の家格の差は、実際はそのへん飛んでる蚊みたいな差しかないんだけど。
 でも向こうがわずかに格上なのは事実は事実なのだ。

 ま、お金持ち度はセレシア侯爵家の方が圧倒的に上なんだけどね(笑)

 だけどお金ではなく、とかく格式というものが物をいう貴族社会において、蚊ほどの差であってもコーデリアの家格は私より上なのだった。

 つまり全てにおいて私の完全上位互換、それがコーデリア=クラウスという女だった。

 しかもだよ?
 コーデリアときたら、まるでそんなもの気にしてませんよーってな顔して「私たち親友ですわね♪」なんて言って私に接してくるのだ。

 でも私には分かっている。

 この女が内心で私を見下しているってことを。
 笑顔の裏で私のことををあざ笑っているということを。

 私はそれを誰よりも正しく理解していた。

 え?
 なんでそんなことが分かるのかって?
 そんなの私が逆の立場だったら、絶対に心の中では見下すからに決まってんじゃん!

 とにかくそういうわけだったので。

 ムカつくコーデリア=クラウスをなんとか追い落とせないかと常日頃考えていた私は、なにかコーデリアの弱みでも握れないかと思って、ちょっとばかしこの冴えない男の話を聞いてあげたんだけど――、

「実は今でこそ少し距離があるけど、僕とコーデリアは幼なじみなんだ。これはあまり外では吹聴できないことなんだけど、僕は幼い頃の一時期、クラウス侯爵家に預けられていたことがあってね」

「あらそうだったのですね。少しも存じ上げませんでしたわ」

 なにか訳有りっぽい?
 まぁコイツの過去とか別にどうでもいいんだけど。

「それでその、僕は昔から彼女に好意を持っていたんだ。だからコーデリアの気持ちを、親友であるマリア様からそれとなく聞いみては貰えないだろうか?」

 ってな感じの内容だったわけ。
 もちろんそれを聞いた私の答えは決まっていた。

「素敵ですね! その恋、ぜひとも応援させていただきますわ!」
 私はとびっきりの笑顔でそう答える。

「それは本当かい!」

「もちろんですわ。気持ちを聞くだけで終わるだなんて、コーデリアの一番の親友として恥ずかしいですもの」

「そうか! マリア様がそう言ってくれるなら百人力だよ!」