「うわ、なにそのビップな買い物」

 いちにいさんし。ぱっと見だけでも七袋くらいはありそうなそれ等にたまげていれば、俺の隣へ進んだ美智が、三角のボタンを押す。

「山内は上?下?」
「下」
「じゃあ一緒だ」

 すぐに開いた扉、ふたりで乗り込む。自分で買ってないだろ、なんてツッコめば、美智から何かを自白してくれるのかな、と思いながら彼女の横顔を凝視していると、その横顔がたちまちブレた。

「きゃ!」

 突然止まったエレベータ。体勢を崩した美智の手から落下した数袋から、中身が飛び出て床へ散らばる。

「な、なに!?故障!?」

 大いに取り乱した彼女にしがみつかれ、俺は反対に冷静を保てた。

「完全に止まったな」
「なんでよ!」
「知らねえよ。非常ボタン押してみよ」

 赤いそのボタンを押してみれば、すぐに係の人の声がした。

「どうされました?」
「なんか、変なとこで止まったっぽいです」
「直ちに駆けつけますので、暫くお待ちくださいませ」

 数秒で終わった通話。心配も何もしてはくれなかったけれど、淡々と対応する係には、美智が落ち着きを取り戻す。