胡都は今日も笑っていた。人行き交う浜辺で潰された、夏の終わりの貝のように。

 一週間後の対策を練りながら、放課後ふらふらと立ち寄ったショッピングモール。ここは胡都と訪れた最後のデート先。電車を乗り継がねば辿り着かぬここへ、自分でも気付かぬうちに足を運んでいたのは、心残りがあるからだろうか。

「ココじゃん」

 館内に備わっている、ゲームセンター。数台あるクレーンゲームのうちのひとつに、白いチワワの姿があった。

「ココ……」

 何のキャラクターかは知らないが、胡都の愛犬そっくりなそれ等を目にしていれば、切なさが募る。
 涙する胡都の頬を優しく舐めていたココ。ココはきっと、そうして十数年もの間、胡都の支えになっていた。

 はあっとクリアな板に溜め息を吹きかけて、エレベータへと向かう。鮮やかなイチョウの木でも見ながら思い耽ろうと考えていたその時、背後から馴染みのある声がした。

「山内も買い物?」

 美智。

 振り返らずとも誰だとわかったが、話しかけられたので後ろを向くと、そこには大量のショッピング袋を引っ提げた美智がいた。