「みっちゃんには、実は歳上の恋人がいるんじゃないかと思ってた」

 山内くんの話から、すっかり逸れてしまったトークの内容。けれどわたしたちふたりにとってこれは、日常のあるあるだから、特に気にはならない。

「はあ?恋人いるんだったら胡都に教えてるに決まってんじゃんっ」
「んー。そうなんだけど」
「どうしてそう思ったの?」

 その質問に率直に答えるのならば、それはズバリ、あからさまにみっちゃんの身なりが変わったからだ。高校生になった途端、高価なブランド服で身を包み、使用する化粧品も持ち歩く小物もプチプラとは程遠いものになった。彼女がバイトに勤しむさまは見受けられないから、てっきりわたしは、社会人かお金持ちの恋人ができたのだと思い込んでいた。

「なんとなくかなあ」

 けれどその答えをわたしが(こと)()に乗せなかったのは、お洒落を楽しむみっちゃんの邪魔をしたくなかったから。

 だって最近、みっちゃん派手なんだもん。

 だなんてもし口にしてしまえば、いい気はしないだろう。性格は昔のみっちゃんのままだし、わたしはみっちゃんが好きだし、余計なことは言わなくていいのだ。

 わたしの回答に「はあ?」と苦く笑った彼女は、残りひとくちのハンバーガーを飲み込んでから、話題を戻す。

「自分を好きでいてくれる人のことを、胡都も好きになれるように努力してみな?そうじゃなきゃあんたはいつまで経ってもあの日に囚われたままで、前へ進めないよ」