なんで地球は浮いているの?変なのー。

 幼少期の俺が、母親にそんな質問をした際、彼女はこう言った。

 世の中は変なことだらけよと、不思議なことばかりで溢れているのよと。

「かれ、し……?」

 そうか。だから三日前とガラリと思考が変わり、再度アタックした俺も変だし、たった三日で彼氏ができる胡都も変なのか。世の中これでいいのだ、これが普通なのだ。

「ちょっとごめん、トイレっ」

 不思議な世に降参していると、口元を押さえた胡都が慌てて席を立っていた。まるで吐き気を催したようなそんなさまに、俺の身の毛がよだっていく。

 まさか。

 頭の中、剣崎がほくそ笑む。彼女がもしも今、吐瀉(としゃ)のひとつでもしているのならば、相手はあいつしかいないと思った。

「ごめんね山内くん。さ、食べよ」

 暫くして戻ってきた胡都は、パフェの上部のいちごをスプーンで掬う。

「美味しそう」

 そう言ってひとくち食べ、微笑むけれど、その笑顔はお面の如く、口だけしか笑っていない。

「無理して、笑わないでよ……」