数日前に別れた元恋人から、いきなり受けた愛の告白。スプーンを片手に静止した胡都の瞳が、瞬きさえも忘れていた。

「この前は、ごめん」

 テーブルの上、可愛らしくデコレーションされたピンク色の食べ物に、言葉を落とす。

「本当は別れたくなかった。俺はまだ、胡都の恋人でいたい」

 断れないから、胡都は俺と付き合った。その事実は相当ショックで、俺は弱った。けれど弱ってしまった時のネガティブな思考回路で出した決断は、間違っていたんだ。

 上品なクラシックのBGMが、静かな店内で優雅に流れる。カチャ、カチャと時折聞こえるのは、他の客のスプーンだかフォークが皿と触れ合う音。そこに重なる胡都の声。

「わたし、彼氏いるの」

 その刹那、脳天がぐらりと揺れ動いて、ピンク色したデザートもいちごのパフェも、そして胡都からも、色が褪せた。