オーダーし、洒落た店内を見渡すと、少々高めな価格設定のせいか、学生服を身に纏っているのは俺等だけだった。今は平日のアイドルタイム。疎らに座る客のほとんどは、すでに子育てを終えたような人たち。

「ねえ、胡都」

 運ばれてきたスイーツを前に、スプーンを手にする胡都を呼ぶ。俺の心臓が早鐘を打つのは、期待と不安が入り乱れているから。
 彼女は過去のトラウマから、ノーと言えなくなった女の子。だから好きでもない俺からの告白を受け入れて、そして、付き合ってくれた。それならばまた、次もオーケーしてくれるのだろうか。

「俺、胡都のことがやっぱり好きだ。俺と、付き合ってほしい」

 もたもたしてると、せっかくあんたに向けられてたその子の気持ち、どっか行っちゃうよ?

 べつに、姉貴の言葉に急き立てられたわけではない。別れを告げたあの日から、その瞬間から、ずっと心の中へ残っていた(わだかま)り。胡都を想えば想うほど、それは大きく広がっていた。