「稜とふたりで写真撮りたいって言ってくれた女の子がいたんだね。やるじゃんっ。で、撮ったの?」
「と、撮ってない」
「ええっ、なんでよ。あんたの嫌いな子だったの?」
「いや、好きな子だけど……」
「はあ〜?」

 じゃあどうしてよ、と前のめりになった彼女のハの字眉毛に、俺も俺が、段々とわからなくなってきた。
 大好きなのに自ら手放し、胡都との写真なんて喉から手が出るほどほしいのに撮らなくて。メールを作成したのに送信せず、線香をあげようと誘われても断って。側にいたいのに、いない。

「わかんねえ……」

 ぐしゃっと前髪を掴んで呟くと、姿勢を戻した姉貴が言う。

「もたもたしてると、せっかくあんたに向けられてたその子の気持ち、どっか行っちゃうよ?」