武藤くんの両手首を拘束し、さっさとその場を去ろうとすれば。

「てか、胡都からさっき連絡あった。飼い犬が死んじゃったんだって」

 と言われ、足が止まる。

「え……」
「一昨日、昨日って看病してたんだけど、今朝死んじゃったって。だから今日の放課後、わたしはゆっぴーたちとお線香あげに行こうと思うけど、山内はどうする?」

 試すような、目つきだった。別れてもなお、あんたは胡都のこと好きだよね?って、そう聞かれているような気分になった。

 行きたい。

 そうすぐ思ったのに、口を衝いて出たのはこれ。

「行かない、バイトだし」

 その瞬間、目の色が変わった美智は、「あっそ」と冷たく言い放ち、俺の真横の風を切って、階段を下りて行く。

 ココっていうの。可愛いでしょ。

 胡都の声が木霊した。