「別れた」

 そう告げた途端、「はあ!?」と美智が、今座ったばかりの席を立つ。

「なにしてんのよ山内!あんた胡都のことフったの!?」
「うん」
「うっわ、あんたは胡都を変えてくれると信じてたのに!まじで最低!」

 怒りに満ちた彼女がガンッと胡都の机を蹴るから、全くこの話に関係ない根本が「ひっ!」と慄く。胡都と仲が良い美智ならば、胡都が俺を好きではなかったことくらい知っていると思うのに、どうしてそこまで怒るのか。

 最低と罵られた意味がわからずに、何も返せないでいる間は、美智から三角の目を向けられ続けた。

「根本、行こ」
「え、喧嘩終わり?」
「喧嘩じゃねえよこんなん。ちょっと意味不明」

 ジグザグと机を縫い、自分の席に座れば鳴るチャイム。退屈な授業中は、ずっと胡都のことを想っていた。