「珍しっ。伊吹、休みなんだ」

 朝のホームルームが終わり、一限目までの隙間時間。根本が無許可に、胡都の席へ着席した。泣いちゃったらどうしよう、だなんて女々しく心配していた俺だったけれど、彼女が来ていないは来ていないで、がっかりした。

「なにやってんだよ、勝手に座んなよ」
「いいじゃんいいじゃん、いないんだし。ここの席いいよなー。窓際の一番後ろとか、最高じゃん」

 椅子の脚を遊ばせて、前後にぶらぶら揺れる根本。するとそこへ、美智を含めた女子三人がやって来た。

「山内、今日なんで胡都が学校来てないか知ってる?」
「いや、知らないけど」
「わたしたち三人のとこにも、なにも連絡来てないんだよね」

 どうしたんだろう、と顔を見合わせて、三人は各々の席へ戻って行く。と言っても、美智はすぐそこの斜め前が自席だから、彼女が着席してからも会話は続く。

「昨日遊んだ時はどうだったの」
「どうって」
「胡都の様子」
「えっと、まあ、普通」
「なにか変わったことなかった?」
「あー……」

 胡都との別れを、美智には報告せねばならないと思っている。何故なら恩があるから。
 胡都に彼氏がいるかどうかを教えてくれたのも彼女だし、女子だけでカラオケに行こうとしていた胡都を、俺と遊ぶように仕向けてくれたのも彼女だ。
 いつ伝えようか何と言おうか。長時間考えるのは苦手だから、今でいい。