「でも本当は、まだ安静にしてなきゃいけないんじゃないの?」

 コンビニおにぎりを頬張って、みっちゃんが言う。

「山内の頭の後ろんとこ。病院行かなくて平気なの?」

 髪で隠してはいるけれど、相当酷い後頭部の傷。わたしはこくんと頷いた。

「山内くん、病院には行きたくないんだって」
「なんで」
「喧嘩で怪我したなんて親にバレたら、怒られちゃうって。だからお姉さんに毎日こっそり、ガーゼ変えてもらってるらしいよ」
「あははっ。山内ってお姉ちゃんと仲良しなんだっ」

 いいなあ、そういうの。とみっちゃんは呟いて、雨水滴る窓を見た。今日はまた、高価なブランドものの腕時計を新調していた。

「ちょっとあとで、保健室行ってこようかな」

 お弁当のウインナーを突つきそう言うと、皆の「なんで胡都が行くの」が揃う。

「山内くん、しょっちゅう傷の様子見せに保健室行ってるみたいだし、傷口の具合聞きに」
「そんなの山内に直接聞きゃあいーじゃん」
「わたしが聞いても、大丈夫しか言わないんだもん」
「へえ〜」

 にやっと意味ありげに含み笑いをするみっちゃんの、言わんとしていることはわかっている。

 山内のこと、好きになってきてるじゃん。

 と、これだろう。

 何も知らない萌ちゃんは、またもやくすくす笑いながら、「胡都は本当に、山内くんが好きなんだね」と言っていた。