「胡都のせいだから」

 両手をポケットへ突っ込んだ秋宮くんは、そう言った。

「ばいばい、胡都。一生俺を想っててよ」

 真横から来る風圧で、水平に靡くネクタイ。彼のさらっとしたヘアも揺れていて。まるでなにかのジャケット写真にも見えた次の瞬間、視界から彼が消えた。

「きゃあああ!」

 ビチャッと頬に温もりを感じた時、誰かが甲高い悲鳴を上げていた。

「なになに!自殺!?」
「まさか二組のやつじゃねえよなあ!?」

 ここは皆から離れたホームの隅で、警笛が鳴ってから秋宮くんが()かれるまでは、たった数秒の出来事。彼が線路へ飛び降り、自ら命を絶ったその刹那を目撃したのは、わたしだけだった。

「秋宮、くん……?」

 へなへなと腰が抜け、わたしはその場に崩れて落ちる。

「秋宮くん、秋宮くんっ……」

 にわかには信じられぬ現実。ようやく停止した目の前の車両に向かって彼の名を呟いていれば、「胡都!」とみっちゃんが駆け寄って来た。

「胡都!なんなのこれ!秋宮は!?」

 みっちゃんは、秋宮くんと相合い傘をしながらわたしがここへ来て、ずっと一緒にいたことを知っている。ギギギと壊れたロボットのように彼女を見上げると、みっちゃんの顔が引きつった。