一変したわたしの態度にショックを受けたのか、秋宮くんから元気がなくなる。

「これだけ告っても、胡都は俺と付き合うの無理なの……?」
「無理」
「俺のこと、ちっとも好きじゃない?」
「好きじゃない」
「でもこれから、もしかし──」
「もしかしたらでもなんでも、わたしが秋宮くんを好きになることは一生ないっ」

 一刀両断するように言い放っておいて、胸へちくりと棘が刺さった。秋宮くんのことは、嫌いではないから。そんな友達を傷付けることは、こっちも幾らか痛手を負ってしまう。

 カンカンカンとすぐそこで、遮断機が下りていく。煩い雨音に混ざって聞こえるのは、「まもなく一番線に電車が参ります」のアナウンス。

 危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください。

 それなのにもかかわらず、ふらっと一歩踏み出した秋宮くんに、胸の奥がざわついた。

「秋宮、くん……?」

 彼の意識とは関係なく、まるで誰かに操られているように、吸い込まれるようにして二、三歩歩めば、失くなる足元の地面。よろめきながら彼が着地したそこは、人が踏み入ってはいけないレールの上だった。

「ちょっと秋宮くん!なにやってるの!」

 わたしの声を掻き消すようにして、電車の警笛が鳴り響く。おもむろに振り向いた秋宮くんの耳には、大音量のそれがもしかしたら聞こえてはいないのかもしれないと思ったのは、怖いくらい、いつもと変わらぬ笑顔だったから。