「高校に入学して、同じクラスになった時からずっと胡都のこと気になってた。夏休み中、胡都のことばっかり思い出してて、ああ、まじで俺好きなんじゃんって気付かされた。もし胡都がオーケーしてくれたらさ、俺、絶対に大切にするから。だから俺と、付き合ってほしい」

 一途な言葉が並べられて、申し訳なくなってしまう。だってわたしは山内くんをただのクラスメイトとしてしか見たことがなくて、そこに恋愛感情は一切存在しなくて。

 ごめん、山内くん。だからあなたとは付き合えない。

 でも、喉まで出かかっているその台詞(せりふ)が、やっぱりわたしには言えないんだ。

「うん、いいよっ」

 コンクリート地面から山内くんに視界を切り替え、笑顔を作って見せた。

「こんなわたしでよければ、お願いします」

 髪を耳へ運んだままの仕草でお辞儀をすれば、彼の目が丸くなる。

「え、ま、まじでいいの!?」
「うん」
「でもだって、俺とそんなに喋ったこともないのにっ」

 好意を寄せる相手に始業式をサボらせて無理矢理ここへ連れてきたくせに。絶対に大切にするだなんてくさいフレーズを難なく放ってきたくせに。わたしが告白に頷いたら頷いたでそんなにも驚くのかと、少し笑えてしまった。
 両手で口元を覆い隠し、手のひらへその笑いを逃していると、一歩わたしに近寄った山内くんが、握手を求めてきた。

「これからよろしくね、胡都」

 柔和な双眸(そうぼう)のその下が、ほんのり赤らんでいる山内くん。

「よろしくね」

 一直線な彼の想い。笑いがおさまれば、胸の奥がズキッと鳴った。