山内くんのうなじへ伝うのは、真紅の血。髪の毛に覆われて傷口は見えないが、おそらく剣崎先輩から受けた強烈な一発が、相当なダメージだったのだろう。それに、その一撃で吹き飛んだ身体が地面へ落ちた際にできた顎のすり傷も、痛々しかった。
「山内くんの家、誰かいるの?」
帰宅して、治療が受けられるのかどうか気になりそう聞くと、彼は「いない」と呟いた。
「俺んち共働きだから」
「そっか」
「あー、姉貴ならもしかしたらいるかもしれないけど、リモートワーク中だったら部屋にこもってるなあ」
なんで?と丸い瞳で尋ねてくる山内くんは、剣崎先輩と争っていた時の彼とは似ても似つかない、純粋無垢な少年のよう。わたしのために、怒ってくれた山内くん。わたしの記憶にない部分を、剣崎先輩に問いただしてくれた山内くんに、感謝が募る。
「じゃあ、もしよかったらうちに来ない?」
手当てをしてあげたいから、という気持ちで誘ったのだけれど、その理由を伝えなかったが故に、彼の顔が真っ赤に染まる。
「え、え、え。なんで急に。胡都の家、行っていいの?」
あからさまに動揺し始めた山内くんに、わたしも変な誘い方をしてしまったと気付き、恥ずかしくなる。
「あ、その。頭の後ろ!自分じゃ手当てできないかなって!」
「手当て?」
「けっこう血、出てるから。ひとりじゃやりづらいかなって……」
ぽりぽりと頬を掻き俯けば、頭に温かな手が乗った。
「じゃあ、胡都の優しさに甘えてお邪魔しちゃおっかな」
「山内くんの家、誰かいるの?」
帰宅して、治療が受けられるのかどうか気になりそう聞くと、彼は「いない」と呟いた。
「俺んち共働きだから」
「そっか」
「あー、姉貴ならもしかしたらいるかもしれないけど、リモートワーク中だったら部屋にこもってるなあ」
なんで?と丸い瞳で尋ねてくる山内くんは、剣崎先輩と争っていた時の彼とは似ても似つかない、純粋無垢な少年のよう。わたしのために、怒ってくれた山内くん。わたしの記憶にない部分を、剣崎先輩に問いただしてくれた山内くんに、感謝が募る。
「じゃあ、もしよかったらうちに来ない?」
手当てをしてあげたいから、という気持ちで誘ったのだけれど、その理由を伝えなかったが故に、彼の顔が真っ赤に染まる。
「え、え、え。なんで急に。胡都の家、行っていいの?」
あからさまに動揺し始めた山内くんに、わたしも変な誘い方をしてしまったと気付き、恥ずかしくなる。
「あ、その。頭の後ろ!自分じゃ手当てできないかなって!」
「手当て?」
「けっこう血、出てるから。ひとりじゃやりづらいかなって……」
ぽりぽりと頬を掻き俯けば、頭に温かな手が乗った。
「じゃあ、胡都の優しさに甘えてお邪魔しちゃおっかな」