ばいばい、胡都。
 ばいばい、胡都。
 ばいばい、胡都。

 木霊していた秋宮くんの声が消えたのは、それからすぐのこと。

「や、山内くん!」

 イテテテと後頭部を摩り、コンクリートから身を剥がした山内くんは、わたしの泣き顔を見るなり息を吐く。

「よ、よかった胡都。生きてて……」

 それはこっちの台詞だよと言いたくなったけれど、それは安堵によって流れる涙が邪魔をして、言えなかった。

 今回の電車は、高校最寄り駅には止まらない快速電車だったようで、そのスピードは凄まじく、ホームを通り越して停止していた。
 もしあれにぶつかっていたら、と思うとゾッとする。山内くんもわたしも剣崎先輩も、木っ端微塵だったろう。

「おい一年!今のでチャラにしてやるから、もう俺に構うんじゃねえぞっ!」

 遮断機が上がりきった線路の向こう側から、剣崎先輩の怒声が聞こえてくる。

「今見たことセンセにちくったやつも、動画拡散したやつも、全員同じ制裁な!」

 ガンッと電柱へ八つ当たりをする彼に、戦慄した周りの人々が素早くはける。

「剣崎、お前不死身だな〜」
「うっせ」
「まじで死ぬかと思ってヒヤヒヤしたわあ」
「だったら助けろよ」

 そんな彼に唯一話しかけることができるのは、やはり同じ部類の人間だ。