やばいやばいと、どよめく生徒たちが注目する中、ふたりの喧嘩はヒートアップ。

「答えろよ剣崎！昨日胡都連れ出して、なにしたんだよ！」
「うるせえな！離せよ！」
「いいから答えろ！」
「テメエには関係ねえだろ！」
「関係あっから聞いてんだよ！」

　きゃあ！と近くの女子生徒が悲鳴を上げると共に、恐れていたことが起きてしまった。グホッと咽せる剣崎先輩。山内くんは、彼の頬を一発殴った。

「もうやめて……お願いだから……」

　やはり言わなければよかった、秘密にしておくべきだった。

　口を滑らせた先ほどの自分を恨んでいると、次に耳へ届くのはこんな音。

　カンカンカンカン

　それは、もうじきここへ電車が通ると知らせる、警報機の音だ。
　淡々と下りてくる遮断機に、焦燥感が募る。彼等が揉めている場所は正(まさ)しく線路の上で、そこは電車が走るところで。

「山内くん！剣崎先輩！今すぐそこから出て！」

　人間の命が簡単に絶ててしまう場所だから。

「なにかしてたら、なんだっつーんだよ！」
「そしたらこのままここで死ねよ！」
「ああ！？じゃあテメエも道連れだな！」

　こんなにも危機が迫っている状況だというのにもかかわらず、我を忘れたふたりは喧嘩を止(や)めてはくれやしない。