横顔だけで、山内くんのもどかしさが伝わった。彼が気にしている剣崎先輩と、昨日の放課後並び歩き帰ったくせに、何の説明も寄越さないわたしへ対しての、不信感が滲んでいた。

「なにも、してないよっ」

 昨日を思い出せば、今(しょく)した大好きな食べ物さえも、胃から吐いてしまいそうになる。

 嘘つき。

 見破るまでもないわたしの嘘に、山内くんの(せば)まった瞳がこちらを向いた。

「胡都と剣崎、ふたりで一緒に帰ってたじゃんかっ。あのあとどこ行ってたの?」

 怒りを堪えてくれている。わたしを追い詰めないようにと、声色を変えないでくれている。そんな山内くんの優しさに、心が痛くなる。

「た、ただの喫茶店……」

 選別した真実を口にすると、彼は上半身ごとわたしに向ける。

「どこの」
「二駅先の、剣崎先輩の地元っ」
「それで?」
「ふ、普通にドリンク飲んで、ちょっと喋って」
「で」
「で……」
「それから、どうしたの」