心拍に混ざり、届く声。
「胡都……」
それは、消え入りそうな声だった。
「俺ね、胡都からもらう真珠が好きなの」
わたしが山内くんにあげる真珠。
それは覚えもなくて。無論、見当もつかなくて。「へ?」と間抜けな泣き顔を上げれば、そこにはわたしと同じくらいしっとりとした眼があった。そのふたつが、細まり笑う。
「俺が胡都のハンカチ、拾ったの覚えてる?」
「あー、うん。確か、入学したての頃だよね」
「そうそう。あれ無記名だったからさ、『これ誰のー?』って黒板の前でブラつかせて聞いたら、胡都、赤い顔しながら真っ先に来て」
ありがとう内山くんっ。
どういたしまして。って俺、山内なんだけど。
え!そうなの!?内山くんだと思ってた!
まじかよウケるーっ。
「あん時笑い合った胡都の笑顔さ、まじで真珠みたいに綺麗だった」
笑顔を真珠に例えた山内くん。その思い出を語る彼の瞳の方が、よっぽどきらきら光る宝石に見えた。
「だから俺、胡都には笑っててほしいんだ。言いたくないことを無理に聞き出そうとしちゃって、ごめんな」
そう言って、最後にくしゃっとわたしの頭を撫でて、何事もなかったように手を繋ぎ、歩み出す山内くん。その頃には彼の潤って見えた双眸も、いつも通りに戻っていた。
「そういえばさ、俺の働くコンビニ、続々と秋の新商品出していってるんだけど、胡都が好きそうなモンブランもこの前発売したよ」
「そうなんだ」
「高校駅前の店とチェーン店だから、たぶんそこにもあると思う。明日学校の帰りにでも一緒に食べない?」
ね、そうしよーよ。と同意を求めるように、繋がれた手へきゅっきゅとリズムが送られた。わたしより大きな山内くんの手。わたしもそこに、リズムを返す。
「うんっ」
山内くんを陰で裏切っているのにもかかわらず、彼と新たな約束を交わすわたしは、自分でも異常だと思う。けれどその約束が、明日が、楽しみに思えてしまった。これは事実なんだ。
「胡都……」
それは、消え入りそうな声だった。
「俺ね、胡都からもらう真珠が好きなの」
わたしが山内くんにあげる真珠。
それは覚えもなくて。無論、見当もつかなくて。「へ?」と間抜けな泣き顔を上げれば、そこにはわたしと同じくらいしっとりとした眼があった。そのふたつが、細まり笑う。
「俺が胡都のハンカチ、拾ったの覚えてる?」
「あー、うん。確か、入学したての頃だよね」
「そうそう。あれ無記名だったからさ、『これ誰のー?』って黒板の前でブラつかせて聞いたら、胡都、赤い顔しながら真っ先に来て」
ありがとう内山くんっ。
どういたしまして。って俺、山内なんだけど。
え!そうなの!?内山くんだと思ってた!
まじかよウケるーっ。
「あん時笑い合った胡都の笑顔さ、まじで真珠みたいに綺麗だった」
笑顔を真珠に例えた山内くん。その思い出を語る彼の瞳の方が、よっぽどきらきら光る宝石に見えた。
「だから俺、胡都には笑っててほしいんだ。言いたくないことを無理に聞き出そうとしちゃって、ごめんな」
そう言って、最後にくしゃっとわたしの頭を撫でて、何事もなかったように手を繋ぎ、歩み出す山内くん。その頃には彼の潤って見えた双眸も、いつも通りに戻っていた。
「そういえばさ、俺の働くコンビニ、続々と秋の新商品出していってるんだけど、胡都が好きそうなモンブランもこの前発売したよ」
「そうなんだ」
「高校駅前の店とチェーン店だから、たぶんそこにもあると思う。明日学校の帰りにでも一緒に食べない?」
ね、そうしよーよ。と同意を求めるように、繋がれた手へきゅっきゅとリズムが送られた。わたしより大きな山内くんの手。わたしもそこに、リズムを返す。
「うんっ」
山内くんを陰で裏切っているのにもかかわらず、彼と新たな約束を交わすわたしは、自分でも異常だと思う。けれどその約束が、明日が、楽しみに思えてしまった。これは事実なんだ。