「今日は午前で学校終わりだしさ、いつものメンバー誘ってカラオケ行くー?」
「いいねえ」
「胡都あれ歌おーよ、KONAの新曲」
「ええっ。まだ覚えてないよお」
「うっそ、おっそ!」
そんな会話をしている間に、一年一組のクラスへ着く。窓際後方の自席へ鞄を置き、椅子に腰をかければ。
「胡都、ちょっと来てくれない?」
と、わたしの元までやって来た山内稜くんに話しかけられた。親指でくいくいと廊下をさす彼に聞く。
「どこに?」
「んー、特に決めてないけど」
「え」
「あ、じゃああそこでいいや。昇降口の階段の下」
どうしてそんな、人気のない場所に。
なんだかぶるっと寒気がしたわたしは、斜め前に座るみっちゃんに目配せをした。それは『どうしよう』のアピールだったけれど、彼女はにたっと白い歯を見せてくる。
「なになにっ。山内ってば胡都に告白でもすんの?」
「ちょ、みっちゃん!」
山内くんとはそんなに喋る仲でもないし、それは絶対にあり得ない。いや、万が一あり得たとしても、ここでそんな風に揶揄われてしまえば、気まずい雰囲気になってしまう。
隣で立つ山内くんをそろり、上目でうかがう。彼はみっちゃんに「うるせえ」と言ってから、わたしの手首を掴んだ。
「胡都、行こ」
「でも、これから始業式──」
「そんなんいいから、行こ」
「ツ、ツッチー先生に怒られちゃうよっ」
「ツッチーってああ見えて意外と理解ある担任で通ってるから、大丈夫」
意味のわからぬことを口にする山内くんに引っ張られ、お尻が椅子から剥がされる。「いってらっしゃーい」と楽しそうに手を振るみっちゃんに助けを求められるわけもなく、わたしは彼の引力に従うほかなかった。
「いいねえ」
「胡都あれ歌おーよ、KONAの新曲」
「ええっ。まだ覚えてないよお」
「うっそ、おっそ!」
そんな会話をしている間に、一年一組のクラスへ着く。窓際後方の自席へ鞄を置き、椅子に腰をかければ。
「胡都、ちょっと来てくれない?」
と、わたしの元までやって来た山内稜くんに話しかけられた。親指でくいくいと廊下をさす彼に聞く。
「どこに?」
「んー、特に決めてないけど」
「え」
「あ、じゃああそこでいいや。昇降口の階段の下」
どうしてそんな、人気のない場所に。
なんだかぶるっと寒気がしたわたしは、斜め前に座るみっちゃんに目配せをした。それは『どうしよう』のアピールだったけれど、彼女はにたっと白い歯を見せてくる。
「なになにっ。山内ってば胡都に告白でもすんの?」
「ちょ、みっちゃん!」
山内くんとはそんなに喋る仲でもないし、それは絶対にあり得ない。いや、万が一あり得たとしても、ここでそんな風に揶揄われてしまえば、気まずい雰囲気になってしまう。
隣で立つ山内くんをそろり、上目でうかがう。彼はみっちゃんに「うるせえ」と言ってから、わたしの手首を掴んだ。
「胡都、行こ」
「でも、これから始業式──」
「そんなんいいから、行こ」
「ツ、ツッチー先生に怒られちゃうよっ」
「ツッチーってああ見えて意外と理解ある担任で通ってるから、大丈夫」
意味のわからぬことを口にする山内くんに引っ張られ、お尻が椅子から剥がされる。「いってらっしゃーい」と楽しそうに手を振るみっちゃんに助けを求められるわけもなく、わたしは彼の引力に従うほかなかった。