「ち、違うっ」
「本当に?」
「うんっ」
「なんかあいつ、胡都にパンまで買って連れ出してたけど、まさか好きだとか言われてないよね?」
「違うっ」
「『俺と付き合ってよー』とかって」
「ち、違うっ。そんなこと言われてないっ」
「じゃあなに話してたんだよっ!」

 本日三度目の後悔が押し寄せる。一途にわたしを想ってくれている山内くんに対しての後ろめたさが、全身を飲み込んでいく。

「ごめん、山内くん……」

 初めて聞く彼の荒げた声に、歩みを止めて呟くと、彼の足もゆっくり止まった。

「ごめん山内くん。本当に、ごめん……」

 意味わかんねえ。

 そう言って、フってくれればいい。

 異性とふたりきりで過ごした時間の詳しい説明もなしに、不可解な謝罪でこの場を収めようとしているわたしは、きっと山内くんに嫌われただろう。彼とわたしは付き合う前、そんなに喋ったこともない間柄。だからそう、わたしを好きだと感じたのは勘違いだったのだと、一時的な感情だったのだと、彼がそう思ってくれればいいのだ。

 そんなことを考えながら頭を下げ、彼が観念してくれるのを待つ。しかし驚いたのは、山内くんの次の行動だ。