山内くんとふたりで食べようと約束していた昼休みは、別々の場所で過ごして終わり、五限目始業のチャイムが鳴った。

「す、すみませんっ。遅れましたっ」
「なんだ伊吹。お前が授業に遅刻するなんて、珍しいなあ」

 早く座れ、と年配の先生に促され、席へ着く。

「どうしたのよ、胡都っ」

 山内くんとお昼は食べるからと言い、いつもの輪を抜けたのにもかかわらず、ひとり遅れての登場に、斜め前のみっちゃんが小声で聞いてくる。

「山内めっちゃ探してたよっ。どこ行ってたのよっ。電話も出ないしさあっ」

 教室中央の席に身を置く山内くんを、ちらりと見る。その瞬間、不安げな瞳とばちんと目が合って、慌てて逸らして。

「あ、あとでちゃんと話すっ」

 と、みっちゃんに告げ、机へうつ伏せた。
 自分で閉ざした蛍光灯の光。目の前の真っ暗な板を見ていれば、そこにあの日が再生された。

 胡都のせいだから。

 秋宮くんに縛られ続けたままのわたしは、ずっとこんな風に生きていくしかないのだろう。