「ご、ごめん胡都っ」

 そんな優しい山内くんを、先輩がぎろりと睨むから、わたしは彼を遠ざけてあげなきゃいけないと思ったんだ。

「だ、大丈夫だよ山内くんっ!」

 列から外れながら、そう叫んだ。

「ちょっと先輩と話してすぐ戻ってくるからっ。山内くんは先にパン食べてて!」
「おい胡都っ!」
「あとでね!」

 何ともないような顔で、ひらひらと手を振り背を向ける。

「お、伊吹さん素直だねえ」

 こんな横暴なやり方でも従順に行動しているというのに、先輩は決してわたしの手を離してはくれなかった。