それから数日後の、昼休み。「バイト代入ったからパンでも奢るよ。一緒に食べよう」の山内くんの言葉に甘えて、今日はふたりきりのランチタイム。購買の長い列に並びながら、彼と他愛もない話をしていると、ふとその会話は他者によって遮られた。
「伊吹さん、だっけ。ちょっといい?」
親しくない人だけが呼ぶ、わたしの苗字。
声のする方に顔を向ければ、そこには高身長で、怖そうな外見ばかりの男子が集まった先輩グループの中でも一際目立つ人が立っていた。
は?先越されたんだけど。
追い越してもいないのに、そう呟いた人だ。
「あ、えーっと……」
列に並んでいる人々を掻き分けて、列に並んでいる人を誘い出すなんて、とても非常識だと思った。だけどそれ以上に、恐怖がわたしを支配する。
どうしてわたしの苗字を知っているのだろう、どこに連れて行かれるのだろう。
小さく震えるわたしに気が付いたのか、山内くんが代わりに喋ってくれた。
「伊吹さん、だっけ。ちょっといい?」
親しくない人だけが呼ぶ、わたしの苗字。
声のする方に顔を向ければ、そこには高身長で、怖そうな外見ばかりの男子が集まった先輩グループの中でも一際目立つ人が立っていた。
は?先越されたんだけど。
追い越してもいないのに、そう呟いた人だ。
「あ、えーっと……」
列に並んでいる人々を掻き分けて、列に並んでいる人を誘い出すなんて、とても非常識だと思った。だけどそれ以上に、恐怖がわたしを支配する。
どうしてわたしの苗字を知っているのだろう、どこに連れて行かれるのだろう。
小さく震えるわたしに気が付いたのか、山内くんが代わりに喋ってくれた。