愛か、お金か。

 天秤にもかけたことがないふたつは比べられるはずもなく、わたしは何も返せず黙るだけ。しーんとした空気の中、限定スイーツが運ばれてくる。

「さ、食べよ食べよっ。お腹減ってきちゃったっ」

 カトラリーケースからフォークを取り出したみっちゃんは、ワンオクターブほどトーンを上げた。

「胡都のモンブランも美味しそう〜っ!ひとくちちょうだ〜いっ」

 いいよとわたしが言うよりも先に、ブスッと刺される茶色の渦巻き。

「ええ、そんなに取るのっ?」
「いいじゃんいいじゃん、わたしのもあげるからー」
「もーっ」

 すっかり戻った場の雰囲気。わたしはそれをまた壊す勇気がなくて、それ以上彼女を問い詰めはしなかった。